最終話 物語の結末は

 次の日。ウィルはマギサに、魔法陣を使って何をしていたのか尋ねた。彼女は、昨日のこともあってか、少し躊躇とまどっていたが、覚悟を決めて答えてくれた。


 魔法陣を使ったのは、村に豊作をもたらすためだったらしい。

 彼女は、大掛かりな魔法を使う時に魔法陣を書いていたそうだ。



 ウィルは、ふと水不足の時に急に雨が降りだしたことを思い出した。


「もしかして、雨を降らせたのもマギサさんだったんですか……?」


 彼女は小さく頷く。そして、ウィルが村の人と話しているのを、魔法で聞いていたと話した。

 ウィルは、改めてマギサの凄さに驚く。

 マギサは続けて、土地を改良したり、害虫の退治をしてくれたのだと教えてくれる。


(そんなにたくさんのことを、マギサさんはしてくれていたのか……。本当にすごい……。)


 ウィルは感心していた。そして同時に、これほどまでのことを自分たちに気付かれないように行っていたことに驚いた。

 村の皆にも、彼女のやってくれたことを伝えたいと考えたウィルは、マギサにそのことを伝える。


 すると、彼女は首を横に振った。

 彼女は、自分が魔女だと知られたら、村人たちは怯えたり、追い払おうとするだろうと言った。



 確かに、彼女が魔女だと知ったら、村の人々は驚くだろう。この村には、魔女が現れたこともなければ、魔女の存在すら知らない人も多かったからだ。

 しかし、ウィルにはどうしても納得できなかった。

 そこで、ウィルは彼女に提案した。


「僕と一緒に、村の皆に伝えましょう。話は僕がします。君は影に隠れていてもいいですから」


 するとマギサは、それなら、と控えめに笑ってうなずいた。



 ウィルは早速、マギサがやっていたことを伝えるために、村長の家に向かうことにした。

 マギサは、ウィルの後ろをついてくる。

 村長は、突然の訪問に少し驚きつつも、ウィルたちを歓迎した。


 ウィルは、マギサが魔女であること、魔法を使ってやったことについて、詳しく説明した。

 マギサは、ウィルの隣に立って、彼の言葉に耳を傾けている。

 ウィルの説明が終わると、村長はあごに手を当てながら言った。



「なるほど……。マギサさんが魔女で、そのようなことをしていたとは……。いやはや、全く気づきませんでした……。」


「はい……。僕もです……。」


「うむ……。だが、村のためにここまでやってくれた方だ。追い出すなんてことは絶対にしません。マギサさんのことは、私たち村人で守りましょう!」


 そう言って、村長は笑みを浮かべる。彼は、マギサを受け入れてくれたようだ。

 ウィルはホッとした。


 そして村長は、村人を集めて話をしてくれることになった。



 ウィルとマギサは、家の外に出た。

 しばらく待っていると、数人の大人たちが家から出てくる。彼らは、ウィルとマギサを見つけると、笑顔で話しかけてきた。

 マギサは緊張しているようで、ウィルの服のすそを握っている。

 ウィルは、彼らにマギサが魔女であることを話した。


 すると、彼らはとても驚いた。

 中には、彼女を恐れるような視線を向ける者もいたが、ほとんどの人は彼女を歓迎し、感謝の言葉を送ってくれた。


「ありがとう……。本当にありがとう……。あなたのおかげで、私たちは救われました……」


 一人の女性が涙を流して、マギサに感謝を告げる。

 他の人たちも口々に、ありがとうと伝えてくる。

 ウィルは、彼らの様子を見て胸が熱くなった。

 マギサは、涙を堪えながらも、みんなに微笑みかける。


 彼女は、魔女である自分を受け入れてくれたことに感動した。そして、自分を必要としてくれることが、何よりも嬉しいと感じていたのだ。


 しばらくすると、マギサは落ち着いた。

 そこで一人の男性が、ウィルに笑顔を向ける。


「ウィル、お前も隅に置けない奴だな!こんな美人を捕まえちまうなんてよぉ!」


 男はニヤリとして言う。

 マギサは顔を赤くして俯いた。

 ウィルは慌てて否定するが、彼の顔は真っ赤になっていた。



***

 その日の夜。

 ウィルたちは、家に帰っていた。

 食事を終えた後、ウィルは一人で外に出る。

 月明かりが綺麗だった。


(今日は色々なことがあった……。)


 ウィルは思う。

 初めて会った時は、マギサが魔女だと知らなかった。

 彼女は、自分の力を使って、村の人を助けてくれた。

 ウィルは、マギサのことを愛おしく感じ始めていた。

 彼女は、村の人に受け入れられて嬉しかったと言っていた。

 そんな彼女が愛おしく思えた。



 だから、ウィルは彼女に想いを伝えようと決めた。ウィルは、夜空を見上げる。満天の星が輝いていた。

 そして、ウィルは目をつむって深呼吸をする。


(よし……行こう……)


 ウィルは心の中で呟く。そして、目を開くと、ゆっくりと歩き出した。



***

 一方マギサは、家の中でウィルのことを待っていた。ウィルは、夕食後に少し用事があると言って出かけていったのだった。

 マギサは、彼が戻ってくるのを待ち続けている。すると、扉が開く音が聞こえた。


 マギサが玄関に向かうと、そこにはウィルの姿があった。

 ウィルは、真剣な表情をしていた。

 彼は真っ直ぐにマギサを見て告げる。


「マギサさん、僕は君を愛しています。どうか僕と結婚してください」


 マギサは驚いた。まさか、ウィルから告白されると思っていなかったからだ。

 しかし彼女は、すぐに冷静さを取り戻す。そして、静かに返事をした。


「はい、喜んで……」


 マギサの目からは、涙が溢れた。

 ウィルも、目に涙を浮かべている。

 二人は抱き合い、お互いの温もりを感じ合った。


 しばらくして、ウィルはマギサの耳元でささやいた。

 すると、マギサは頬を赤く染めながら答える。

 彼女の声には、喜びがにじんでいた。

 二人の唇が重なるまで、あと数秒……。

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魔女の恩返し 夜桜くらは @corone2121

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