最終話 そうだ、都市伝説を作ろう!


(SE)チャイムの音


モブ(1)

「きりーつ、れい」


モブ(大勢)

「「「ありがとうございましたぁ」」」


(SE)教室のざわめき、迫る足音


リナ

「ねぇねぇ、ちょっと聞いてよ、キョン!」


キョン

「今日は一段と騒がしいわね。どうしたっていうのよ」


リナ

「衝撃の事実を知ってしまったの!」


キョン

「あら、なにかしら」


リナ

「都市伝説ってぜんぶ『ウソ』なんだって!」


キョン

「当たり前じゃない」


リナ

「キョン、知ってたの⁉」


キョン

「たぶん学校で知らなかったのはリナだけよ」


リナ

「マジ⁉」


キョン

「マジよ。それじゃ、私は帰るわね」


リナ

「待って、まだ話は終わってないの」


キョン

「私は終わらせて帰りたいのだけど」


リナ

「あたし思ったんだ。それならあたしにも作れるんじゃないかって」


キョン

「作るってなにを?」


リナ

「決まってるじゃん。あたしたちで新しい都市伝説を作るんだよっ!」


キョン

「いま、しれっと『あたしたち』って言ったわね」


リナ

「あたしたち、親友でしょ!」


キョン

「別にやらないとは言ってないわ」


リナ

「キョン!」


キョン

「実は私、ちょっとアイデアがあるの」


リナ

「ほんとっ⁉ キョンがそんなに都市伝説に興味を持ってくれてるなんて思ってもみなかったよ」


キョン

「そりゃあ、こんなに付き合わされたら多少はね」


リナ

「それで、どんなアイデアなの?」


キョン

「犬サムライ」


リナ

「犬サムライ」


キョン

「なぜかリナの周りを犬が付きまとってくるのよ」


リナ

「あ、被害者はあたしなんだ」


キョン

「それが急に立ち上がって、刀を抜いてズバアアァァ!!」


リナ

「あたし死んじゃう! それ死んじゃうから」


キョン

「そのでかいおっぱいを削ぐようにズバアアァァ!!」


(SE) 胸を隠す衣擦れ音


リナ

「ひどいっ!」


キョン

「守るものが無くなった心臓をグサアアァァ!! ジ・エンド」


リナ

「死んだあああああ! あたし死んじゃった! いや、死んじゃダメなの!!」


キョン

「あら、どうして?」


リナ

「都市伝説ってウワサで広まるんだから、被害者が死んじゃったらウワサ流せないでしょ」


キョン

「なるほど。荒唐無稽な話なのに、そういうところは理屈っぽいのね」


リナ

「だから、殺されない方向でお願いしゃす。あと『猫の忍者』って都市伝説がもうあるから『犬サムライ』はちょっと厳しいかも」


キョン

「犬サムライはダメなのね。それじゃあ、こういうのはどう?」


リナ

「聞かせて、聞かせて」


キョン

「人気のない道に、夏なのにコートを着た女子高生が立ってるの」


リナ

「その女子高生、マスクしてたりしない?」


キョン

「うつむいて歩いてる人が近くを通ると、突然コートをバッと広げてっ」


リナ

「えー! なになに? それで、どうなるの⁉」


キョン

「そのでかい乳を見せつけて『大丈夫? おっぱい揉む?』って聞くのよ。リナが」


リナ

「あたしだったああああ!」


キョン

「すぐに町中にウワサが広まるわ」


リナ

「きっとそのウワサ、都市伝説じゃなくて不審者情報になる」


キョン

「口裂け女だって不審者情報みたいなものじゃない」


リナ

「地元でやったらすぐにあたしってバレるから!」


キョン

「憧れの都市伝説になれるチャンスじゃない」


リナ

「まだ犯罪者にはなりたくない」


キョン

「捕まったら犯罪者。逃げ切れば都市伝説『おっぱい揉む?JK』の誕生よ」


リナ

「そんな卑猥な都市伝説はイヤッ! あと、リスクが大きすぎるっ!」


キョン

「さっきから注文が多いわ」


リナ

「あたらしい都市伝説を作るのって大変だ」


キョン

「そうね。だからリナはこれまで通り、都市伝説を探して回る方に専念しなさい」


リナ

「…………キョンも手伝ってくれる?」


キョン

「それはどうかしら?」


リナ

「えー! ここは『いいわよ』っていう場面じゃないの⁉」


キョン

「楽しい時間を過ごせるなら、考えてもいいけど」


リナ

「それは保証する! あたしとキョンならどこで何してたって楽しいもの!」


キョン

「リナ……」


リナ

「キョン!」


キョン

「楽しくなかったら、どうなるか……わかってるわよね」


リナ

「え……。ど、どうなるの?」


キョン

「その乳をズバアアァァ!! からの心臓をグサアアァァ!!」


リナ

「まさかのキョンサムライ!」


キョン

「は、さすがにかわいそうだから――その胸の脂肪が溶けるまで揉みほぐすことにするわ」


リナ

「ひぃっ!」


(SE) 胸を隠す衣擦れ音




     【了】

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【短編】女子高生とおっぱいと都市伝説【2万字以内】 石矢天 @Ten_Ishiya

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