第6話 そうだ、ひとりかくれんぼをしよう!
(SE)チャイムの音
モブ(1)
「きりーつ、れい」
モブ(大勢)
「「「ありがとうございましたぁ」」」
(SE)教室のざわめき、迫る足音
リナ
「キョン、みぃつけた!」
キョン
「あら、リナ。久しぶりじゃない。私、隠れていたつもりはないのだけど?」
リナ
「じゃあキョン、つぎ鬼ね」
キョン
「誰が鬼よ」
(SE)衣擦れの音
リナ
「ぎゃああああああ! いたい、いたいっ! そこはダメッ、服の上からでもツネっちゃダメなんだからああぁぁ!!」
キョン
「この前、逃げたときのぶんよ……えいっ」
リナ
「ああああ、ひねらないでっ! ちぎれるっ、ちぎれちゃうからっ」
(SE)パン、パンと手を払う音
キョン
「これくらいで勘弁しといてあげる」
リナ
「いたたた……。まだ覚えてたんだ。もう忘れたと思って遊びにきたのに」
キョン
「だからしばらく顔を出さなかったのね」
リナ
「あたしに会えなくて寂しかった?」
キョン
「とても心穏やかな日々を過ごせたわ」
リナ
「じゃあ、今日は心躍る日にしてあげるね」
キョン
「相変わらずメンタル強い子ね」
リナ
「と、いうわけで! 今日は『ひとりかくれんぼ』をしようと思います!」
キョン
「というわけでもなければ、私はしようと思ってもいないのよ」
リナ
「えー。いいじゃん。やろうよぉ。ひとりかくれんぼ」
キョン
「だいたい『ひとりかくれんぼ』だったら、リナがひとりでやればいいじゃない」
リナ
「最終的にはそうなんだけど、準備を手伝ってほしいの」
キョン
「準備? かくれんぼにどんな準備が必要だっていうの?」
リナ
「かくれんぼじゃないよ。『ひとりかくれんぼ』だよ」
キョン
「だから、ひとりでやるかくれんぼなんでしょ? 自分で言ってて意味わからないけど」
リナ
「だーかーらー。これは都市伝説なの! 事前の準備が大事なのっ!!」
(SE)ゴソゴソとカバンをあさる音
リナ
「まずぬいぐるみでしょ」
キョン
「このクマ。お腹が裂けてるんだけど、大丈夫?」
リナ
「大丈夫、大丈夫。糸があるから」
キョン
「先に縫っておきなさいよ、かわいそうでしょ」
リナ
「それとねぇ、お米」
キョン
「お米」
リナ
「あっ、あと爪がいるんだ! しまった……。あたし昨日、爪切っちゃったんだ……」
キョン
「……なんでこっちを見てるのかしら」
リナ
「キョンの爪、ちょうだい?」
キョン
「やだ、こわい。なんに使うつもりよ」
リナ
「このクマちゃんのお腹に、お米と一緒に詰めるの」
キョン
「やだ、気持ち悪い。そんなこと言われて『はい、どうぞ』って自分の爪を差し出すわけないじゃない」
リナ
「えー、だめぇ? 困ったなあ。どうしよう」
(SE)ゴソゴソとカバンをあさる音
キョン
「爪がカバンから出てくるわけないでしょ」
リナ
「あ、あった!」
キョン
「あるの⁉ さすがに引くわ……って。ああ、
リナ
「割れちゃったんだよね」
キョン
「割れたなら、さっさと捨てなさいよ」
リナ
「なんかもったいなくて」
キョン
「割れたネイルチップに使い道なんかないでしょ」
リナ
「でもほら。今日、役に立った」
キョン
「ドヤ顔してんじゃないわよ。こんなホラーな展開に巻き込まれて、ネイルチップが不憫だわ」
(SE)ザザザ、と米が注がれる音。
キョン
「あれ? 私、ナチュラルに無視されてる?」
リナ
「あとはネイルチップを入れて……。これで良し。はい、キョン」
キョン
「なんで私は、腹に米とネイルチップを詰められたクマのぬいぐるみを渡されたのかしら?」
リナ
「縫って欲しいなあ、って」
キョン
「なんで私が裁縫しなきゃならないのよ」
リナ
「だって……。リナも知ってるでしょ……ほら、あたしってぇ」
キョン
「なによ。リナが超絶不器用で家庭科の成績が1って話?」
リナ
「ちょっと、わざわざ家庭科の成績まで言わなくていいよっ。恥ずかしいでしょ」
キョン
「もぉ。仕方ないわね。じゃあ、ひと針ひと揉みね」
リナ
「なにそれ」
キョン
「だからぁ」
(SE)糸が生地を通る音。
(SE)衣擦れの音
リナ
「あん」
キョン
「ひと針縫ったら」
(SE)糸が生地を通る音。
(SE)衣擦れの音
リナ
「やん」
キョン
「リナのおっぱいを」
(SE)糸が生地を通る音。
(SE)衣擦れの音
リナ
「んっ」
キョン
「ひと揉みする」
(SE)糸が生地を通る音。
(SE)衣擦れの音
リナ
「あっ」
(SE)糸が生地を通る音と、衣擦れの音に被せて
リナ
「うんっ……、あっ……、んっ……、だっ……、めっ……、やっ……」
キョン
「はい、完成。このあとは?」
リナ
「はぁ、はぁ、はぁ。……えーっとね。午前3時になったら――」
キョン
「無理じゃない。午前3時なんてリナ、絶対に起きていられないでしょ」
リナ
「…………たしかに」
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