☆エピローグ 寂しい夜は☆
お昼も過ぎた頃、マコトとユキは宇宙港へ向かう為、王城の地下駐車スペースへと出て来た。
「いやいや、アレンショターリュが大変 お世話になりました」
「お役に立てて 光栄にございます」
兄王子と執事長たち、そしてショタ王子も、お見送りに来てくれている。
ケモ耳美少女捜査官である二人を見上げる愛顔は、恥ずかしそうだけど寂しそうで、大きな瞳に涙を浮かべている。
「では、ショタ王子…あ」
マコトが挨拶をしようとしたら、少年王子が二人へと抱き付いてきた。
涙を見せたくないらしい少年は、二人の引き締まった平らで細いお腹に顔を埋め、黙って泣いている。
「ショタ王子…」
優しく名前を呼びながら、二人は少年王子に抱きしめられるまま、艶々サラサラな髪を優しく撫でた。
ユキも。
「鍛錬の旅…とても楽しゅうございました♡」
と、ソっと肩を抱いた。
「…ぅん…」
涙声まで愛らしい美少年には、しかし「男子として、もう泣かない」という、強い決意も感じられる。
「「!」」
そしてマコトとユキも、この旅の間に感じていた、ショタ王子に対する不思議な既視感の正体に、ようやく気が付いた。
運転手付きのビークルで送られる二人を、見えなくなるまで手を振って、決意に輝く愛顔を向け続けてくれていた、ショタ王子。
「…きっと ご立派な王子様へ、成長されますわ」
「うん。ボクも そう思う」
「それも全て、お二人の御尽力の賜物でございます」
と、助手席の執事長が、穏やかに微笑んだ。
宇宙港から白鳥に乗って、二人は地球本星へ。
地球に帰還し、本部のクロスマン主任へ報告に上がると。
「うむ。二人の活躍、惑星サンサー・ラランドの王族や政府、国民たちからまで、大変な感謝を戴いた。二人とも、よくやってくれた。ご苦労だったね」
「「はい!」」
と、モノ凄く久しぶりに、お叱りの無い労いの言葉を戴いた。
当然、懲罰も帳消しである。
寮の自室へと戻って、明日に提出をする報告書も纏めて、夜。
夕食もシャワーも終えたマコトとユキは、その魅惑的な裸身をパジャマに包むことも忘れて、ベッドへと転がっていた。
報告書の再チェックを済ませたマコトが、隣で目を閉じて転がっているユキへと、告げる。
「さっき、ショタ王子に抱かれた時に 思い出したんだけどさ」
「あら、私もですわ。ショタ王子様にヌードを見られても、なんだか当たり前だったような、あの感覚…」
「うん」
二人でハモった。
「「シュンビンマル」ですわ」
シュンビンマルとは、二人が田舎にいた頃、ユキが飼っていた全高一メートル八十センチもある大型種「大(だい)アキタ犬」の名前である。
お隣同士で幼馴染みな二人は、よくこのシュンビンマルと一緒にお風呂に入ったし、身体を洗ってあげてもいた。
別に、ショタ王子とシュンビンマルを同列に考えている事など無い。
ただ、愛らしい存在に対して、姉的な無意識で庇護欲を刺激されていた事も、事実であった。
「ショタ王子には、申し訳ないけれど…」
「たしかに、とても可愛らしいお方でしたもの♡」
もちろん、シュンビンマルが恥ずかしがる事なんて無かった。
けれど、捜査官の試験に合格をして、田舎から出て来る際、寂しそうに二人のお腹へ頭や鼻先を摺り寄せて来た大きな愛犬を、思い出していた。
「「………」」
室内照明を落とすと、夜の都会の明かりが窓から差し込み、薄暗くてキラキラした間接照明となる。
愛しい家族の事を思い出し、またここ数日と寝食を共にしていた愛らしい年下少年王子様を思い出すと、二人のベッドが何だか寂しい。
「…マコト…」
「うん」
裸のまま、二人で抱き合って、瞼を閉じた。
中性的で美しい王子様のようなマコトと、無垢で愛らしいお姫様みたいなユキが、一つのベッドで抱き合って眠る。
「…今度の有給休暇さ、シュンビンマルに会いに 帰省しようか」
「ええ…♪」
二人は、穏やかな眠りへと落ちていった。
~エピローグ 終わり~
SF ねこうさ ゆりボイン 6 八乃前 陣 @lacoon
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