日曜日の朝

王生らてぃ

本文

 休みの日はいつも早起きして、すみれのために、腕によりをかけた豪華な朝ごはんを作る。

 起床は朝の六時。いつもより少し遅い時間。すみれはまだ寝ているので、起こさないようにそっと部屋を抜け出す。

 顔を洗ってコーヒーを淹れている間に、すみれの大好きなベーコンエッグを作る。目玉焼きは半熟が好み、食パンは八枚切りのやつ、表面だけを軽く焼いた焼き加減がこだわり。いろいろ準備をしている間にすみれが起きてくる。



「おはよう、すみれ。ご飯できてるよ」

「ん」



 ミルクも砂糖も入れずにブラックコーヒーを飲んで、テーブルに着いたすみれの前に、いつも通りの朝食を差し出す。すみれはスマホをいじりながら、それを片手で食べる。



「おいしい? おいしい?」

「ん」

「よかったぁ~。今日はね、食パン、すごく上手に焼けたんだよ。それに目玉焼きも。今日の半熟加減はばっちりだと思うの。味付けもいい感じでしょ? 塩加減が? どう?」



 すみれはご飯を食べたあとソファに寝転がって、ネットの配信サービスで映画を見始める。その間に私は洗濯機を回し、その間に食器を洗って、ベランダに布団を干す。昨日まで雨だったのに、今日はカンカン照りの快晴。絶好のお洗濯日和だ。

 そうこうしている間に洗濯が終わったので、ベランダに洗濯物を干す。乾燥機を使ってもいいけど、やっぱり太陽にさらしてあげた方が気持ちいい。



「すみれ、お掃除するからね。掃除機かけるよ? いい? 邪魔じゃない?」



 はたきで本棚の上のほこりを払い、掃除機でフローリングをきれいにしていく。絨毯もカーペットも、いったんベランダに出してホコリを払い、隅々まで掃除する。



「ふんふん~」

「うるさい」



 すみれがちっと舌打ちして、私をにらみつける。



「ご、ごめんね。うるさかったよね。ごめんね、許して、私のこと嫌いにならないで、ね? 映画見るのに邪魔だったんだよね、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」



 すみれは許してくれたみたい。

 お昼はパスタだ。すみれの大好きなアーリオ・オーリオ。パスタは1.4mmの細いやつで、柔らかめにたっぷり茹でたやつが好き。ニンニクやトウガラシはできるだけたっぷり、オリーブオイルは少し高めの高級なやつ。



「はい、どうぞ! すみれ、お昼ご飯だよ!」

「ん」



 すみれがフォークでパスタをくるくると回して口に運ぶ姿はとってもかわいい。ほんとうにきれい。こんなにおいしそうに食べてくれると作ったかいがあったというものだ。

 食べ終わってフォークをからんと皿の上に投げ捨てると、すみれはふわあとあくびをした。



「ヒマだなぁ、今日も」

「うんうん、日曜日だしね。ゆっくり休んで――」

「あんたに話しかけたわけじゃないから。なに勘違いしてんだよ。自意識過剰なんじゃないの?」



 それでもいい。

 あなたが「ヒマ」でいてくれることが、私の生き甲斐なのだ。あなたがそれで幸せなんだったら、不幸ではないのだったら、それが私にとっての幸せ。

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日曜日の朝 王生らてぃ @lathi_ikurumi

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