大切なのは、誰かと争うことじゃなく愛し続けること

よく出来た異世界ファンタジー。
権力闘争の間で二人の恋が無惨に散らされた、悲しい話。

タイトルに『Storia di gloria』とある。
訳すと『栄光の物語』

ユリスの名前『Julis Gloria』とある。
ユリスはアンリ王の実弟の息子。
なので、アンリ王の息子パスカルと同じく、王位継承権のある血筋。
パスカルの姓もまた、グローリアと思われる。
なので『グローリア家の物語』の意味も含んでいるのかもしれない。

なぜローベルは、隣国の人たちと手を組んだのか。
アンリ王による王政はうまくいっていたと仮定する。
そもそも、現国王と息子を毒殺して次期国王になるのが手っ取り早い。
なにより楽だと思われる。
なぜそうしなかったのだろう。
実弟というだけで、役職も権力も与えられていなかったと考える。
そもそも、市井に住む主人公と息子ユリスが出会う事自体、通常ならありえない。王位継承をもっている人間は、それなりの身分と暮らしをしていて然るべき。
主人公と出会ったときからすでに、実弟は兄との権力闘争に敗れ、日の当たらない生活をしていたのだ。

兄弟げんかのごとくお家騒動に巻き込まれ、主人公は国や両親を、ユリスは大好きな人と結ばれる夢を絶たれたのだ。
主人公が目を覚まして、ユリスの死を目の当たりにしたらどうするだろう。
自決してしまうかもしれない。
仮に生きたとしても、はたして生きていけるだろうか。

彼女は泣きたいほど、悲しくつらいことを経験してきた。
最後にようやく、親友に出会い、互いの気持ちを告げあえて安心できたのだ。
目を覚ましたとき、彼女は気が狂ってしまうか死んでしまうかもしれない。
ユリスと同じように、自分とユリスを別々にさせた世界を呪って。