4#この花の種が咲くまで
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
ぎぃーーーーーーーー!!ばたん!!
アナグマのボルの周りの木々をチェンソーで切り刻んで次々と倒れる音が聞こえて、ハッ!!と振り向いた。
「な、何するんだ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!
アナグマのボルの叫びは、無惨に伐られた切り株を退かすブルトーザーの轟音で掻き消された。
「だからだ・・・皆、この森を出ていったのは・・・!!」
アナグマのボルは呆然とした。この周りの変わり果てた山の醜態を・・・
もう、この森に皆と遊んで駆け回った木々や草原も川も丘も全部消えてなくなり、ただ土肌だけが露わになって拡がっていた。
アナグマのボルの目から悔し涙が溢れて止め処なく頬を伝った。
「何で・・・何でこんな事に!!」
アナグマのボルは大声で泣いた。
しかし、無情にも幾ら泣き喚いてもこの森は戻ってこない。
森の動物達は戻ってこない。
ただ、地面にまだ奥底にあるあの時の風船が運んできた花の種があるだけだ。
「花の種よ、お前だけだ。何があろうもも君が花を咲かせるまで僕はここを離れ・・・」
がっ!!
突然、アナグマのボルの脇腹を蹴飛ばされてバウンドして、土だらけの地面に転がった。
「何だ?害獣かよ。まだ居たのか。工事の邪魔なんだよ!!さっさとくたばりやがれ!!」
この住処の山を削った工事の人間が、アナグマのボルを踏みつけてきた。
「やめてくれ!!やめてくれ!!この花の種を!!咲くまで!!僕は!!僕は!!ここを離れない!!」
人間に踏まれ続け、蹴飛ばさされ続け、全身痣だらけになりながらもアナグマのボルはこの花の種の埋まってる土から離れまいと死守した。
がっ!!
打ちどころが悪かった。
人間に急所を蹴られたアナグマのボルは、その場で痙攣して絶命してしまった。
「なーんだ。馬鹿なアナグマ!!ヘッヘッヘ!!」
アナグマのボルの亡骸はそのまま放置され、やがてそれは地中深く埋もれた風船が運んだ種の養分になっていった。
・・・・・・
・・・・・・
やがて、動物達の森だった山に1面のメガソーラーパネルがビッシリと敷き詰められた。
その一角に、除草シートを突き破ってポツンと赤い花が咲いていた。
それは、アナグマのボルが命を賭けて咲くまで待ち続けていた、あの時の森の中に降りてきた風船が運んできた花の種が発芽した姿だった。
「ありゃまぁー!!あの花は!!」
変わり果てたかつてここが住処だった山を見に飛んできたカケスのジェーは、メガソーラーパネルの隙間からヒョッコリと這い出た赤い花を見つけて、ずっとこの花が咲くのを待ち続けたアナグマのボルを思い出して目頭を熱くして感慨深く眺めていた。
やがてその赤い花は、メガソーラーパネルを押して破壊してドミノ倒しのように次々と、がっしゃーーーーん!!と轟音立てて倒れて雪崩のように斜面を押し流した。
それはまるで、夥しいメガソーラーパネルの為に追い出された森の動物達からの恨みが、この赤い花に宿ったようだった。
〜森に落ちてきた風船が運んできた花の種〜
〜fin〜
森に堕ちてきた風船が運んできた花の種 アほリ @ahori1970
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