魔法士の先生と、その中でも最も美しい弟子たる『私』の物語。
独白調、それも丁寧口調の文体が印象的なファンタジー掌編です。
ちょっぴりアダルティ……といっても直接的な性描写などがあるわけではないのですけど、でもそこがお話の核というか軸というか、ある種の生々しいえぐみのようなものがたまらないお話。
作中で描かれる『私』と先生の関係性(というか先生の振る舞い)に関して、いろいろな感想を抱かされちゃうこの感覚がとても好き。
色恋や性愛の形は人それぞれ、まして現実とは常識から異なる異世界の話だと、その辺を差っ引いて考えてもなお「いやでも、これは……」となるところ。
自分の中で「人の色恋についてジャッジするのは下世話」という気持ちと、「でもこれを放っておくのは大人としてどうなの」という感想がぶつかり合う、この読み心地がとても魅力的でした。
物語内で起こっていること対して、直接の当事者でないにせよ『関わらせられちゃう』感じ。
また、単純に「えぐみがあるからこその邪悪な妖艶さ」自体も魅力だったりする、素敵な雰囲気のファンタジーでした。