第2話
「あーっ!あっついなー!」
「ちょっと、男子!臭いってー。」
「はー?しょうがねーだろ!」
男子の体育は剣道だったらしい。
胴や面が汗を吸って、匂いがするって女子が騒いでいた。
「あ、あれくれよ。なんか匂いのするシート!」
「え、斎藤君⁉︎う、うん!もちろんいいよ!」
クラスのトップの派手な女子は、男の子に話しかけられて急にしおらしくなる。
牙を隠す、ライオンのようで。
少し、気味が悪かった。
その子は、男子に汗拭きシートを渡す。
あれは、私の友達が更衣室で使っていたものと同じだったか?
「おー。さっぱりするな!いい匂いになったか?」
「うん!とってもいい匂い!」
やっぱり、教室は水色の空気になる。
まるで、澄んだ青空のように。
でもでもでも。
みんな、同じ匂いで。みんな自分の汗を隠して。
これって、何かの宗教みたいで嫌だなぁ。
頑張って頑張って努力して、
それで汗をかいて、
匂いがするって言われて、
みんな自分を隠してく。
…そんなの、間違ってない?
私の髪から、ぽたりと汗の滴が落ちる。
ニュースキャスターのお姉さんは、今日は猛暑日だって言ってたっけ。
「ね、あの子ちょっとアレじゃない?」
「女子力低いよね。」
「正直、臭いっていうか…。」
ヒソヒソと、教室の隅でさっきの女子が喋っている。
よく見ると、私の友達もそこに居た。
「…そうだよね。私もそう思ってた。」
彼女は私を真っ直ぐに見つめて、そう言った。
やっぱり、あの子もそうなんだ。
普通じゃないと、除け者にされて。
だからみんなおんなじで。
みんな同じで、みんないい。
汗っかき ぐらにゅー島 @guranyu-to-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます