終章:君に出会えて

「いらっしゃい。光羽ちゃん」

「お邪魔します」

笑人のお母さんに招かれて、私はリビングに足を踏み入れた。

笑人のお兄ちゃんである明人先輩もいた。

私は率直に、頼み事をした。今日のメインはそれだ。

「あの…今日は笑人君に渡してほしいものがあって…いいですか?」

「うん。いいよいいよ」

お母さんからの承諾を受け、私は手に持っていた紙袋から約100枚の紙の束を取り出した。

ーこれは、私が書いた小説だ。

「私、趣味で小説を書いてるんですけど、笑人君との物語を書いたので良かったら見てください…」

何となく恥ずかしくて俯きながら話した。

「まあ、ありがとう」

お母さんも微笑みながら、受け取ってくれた。

「また来てね。光羽ちゃん」

「はい。ありがとうございました」

私は深々と頭を下げた。


笑人の家を後にして、振り返ると冷たい風が体温を奪った。

「大好きだよ、笑人」

私は前を向いた。そして歩く。

もう二度と振り返る事はしなかった。

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君との思い出だけは、幸せで満ちていた @trump_magic

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