あとがき

 今回の『廻りくる季節のために』第二部縄文編は、一年も掛からないで私としては驚異的早さで、書き上げることが出きた作品である。第一部が完成したのは昨年の八月八日頃で、縄文編を本格的に書き始めたのが十三日頃だった。特に十二月と今年の一月二月にかけては、集中的に取り組んでいたために、二月頃から疲れからか中弛み状態に陥り、しばらく休んでいたこともあって、思いのほか作業がはかどらなかった。

 それでも、何とか気をとり直して、書き進んだ甲斐もあって、無事に完結することが出きた。この作品を書いていて、作者というものは非常に、身勝手であることに気がついた。自分の都合によって、この作品の中で人を、何人か殺しているのである。物語の中に出てくる登場人物は、主人公であってもわき役であっても、みんな自分自身であったり、身内のような気持ちで取り組んで来たので、他人事とは思えないような状態でもある。

 第一部では、ちょい役で登場させたつもりの山本徹も、今回はいつの間にか主人公になっていた。そして、勝手に動き出しているのだから、書き手側としてはただ茫然として、見守っているしかないのであるが、最終的にはやはりこちらに責任があるのだから、ちっきりと締めなくてはならなかった。

 さて、一部を書き終えて縄文編を書こうと思い立った時、発想はよかったものの縄文時代そのものが、まったくわからず仕舞いで、雲をつかむような話だったことも事実だった。そこで、私は例によってインターネットを駆使して、縄文時代に関するあらゆる情報を集めたり、街にある縄文遺跡公園に幾度となく足を運んで、自分なりに縄文の雰囲気を掴もうと、努力はしたつもりではいるのだが、物語の中に出てくる縄文の世界は、八十パーセント以上が私の創作の世界であり、実際にはどうなのかということになると、?マークが並んでしまうというのが正直なところだろう。

 ただ、この作品でひとつだけ後悔しているのは、熊を登場させたことだった。人喰い熊などという設定自体、どう処理したらいいのかわからず、非常に悩んだりもしたが自分なりに何となく、その結末をでっち上げて辻褄を、合わせることが出きたようだ。

 この作品を書いていて、自分でもワクワクしたり、ハラハラしたりあるいは、ドキドキしながら波乱に飛んだ思いで、自分でも物語にどっぷりと浸りつつも、楽しみながら書けたのは、自分にとってもこの上もなく、幸運なことではなかったと思っている。

 しかしながら、この縄文編も終りに近づいた頃、ふと、このまま物語を終わらせてしまっても、いいものだろうかという、疑問が沸き上がってきた。それは私がこの物語に執着心を、抱いていたからに他ならないのだが、物語の中で私の意思に反発しながら、それぞれ活躍してくれた主人公、脇役・その他も含めて、ここまま葬り去ってしまうが忍びなかった。そこで、以前からいつかは書いてみたいと思っていたテーマがあって、これが現在のところ、同時進行的に書き進んでいる『パラレルワールド編』である。

 どんな内容になるかはいささか疑問ではあるが、構想のほうはわりと自信があるので、そこそこの作品に仕上がるのではないかと思っているので、ぜひご期待のほどを。

                        By Haruo Satoh 2020.5.14.

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廻りくる季節のために 縄文編 佐藤万象 @furusatoha

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