天野蒼色の朝

栄養剤りぽべたん

ぺんさんの朝は早い

 ——朝日が目に入る。起きた直後、まだ寝ている私の番の顔を見る瞬間が一番好きだ。


 起き始めるまでが少し弱い私の番。柚子くんの顔をジーっと見続ける。


「…ん、蒼空そら?今日も先に起きてたのか、おはよう」


 同じ布団の中から腕だけ出し、私の頭をなでてくれる。心から好き、愛してるとしか言葉が出て来ない。


「この時期暑くてクーラーつけてようやく二人きりになれたね柚子くん…へへへへ。」


 油断するとあの猫はすぐ私の番の周りをうろちょろとするのだ。椅子もベッドも占領し、私をみて鼻をフンッと鳴らしている。


「今は逆に蒼空が暑いよ…。さ、もう出る準備するから避けて。」


 この自分が引っついている状況から離れるときが一番寂しい。

「えー…もう少し…」


 すると苦笑しながらポンポンと頭を軽く叩かれ、抱っこされて一緒に起きる。


「蒼空も準備しなきゃいけないんだから。」


 暗にわがまま言うんじゃありませんと言われるが、抱っこでまだ引っついていられる状況が好き。クンクンと寝起きの私の番の匂いをかぎながら、番の袖をつかむ。


「むー…むーむー…じゃあ着替えたり顔洗ったりしてくる。」


 しょうがなく、本当にしょうがなく離れ、急いで支度をする。




「今日も蒼空は準備が早いね。」


 リビングへ行くと、朝ごはんを作ってくれている私の番。いただきますと一緒にして、ご飯を食べ終え、見送ろうと——


「…蒼空?服掴まれたら困るんだけど」


 無意識に服を掴んで引き止めていた。ハッと我に帰るが手は離さない。


「ちゃんと帰ってくる?危ないことしない?事故に合わない?」


 するとまた苦笑しながら、服をつかんでいた私の手を優しく離し、握りながら


「大丈夫、ちゃんと蒼空の元に今日も帰ってくるよ。いってらっしゃいって言ってくれないかな?」


 そうだ、見送りの挨拶があったんだった。


 今は朝だから頬にキスをした後

「いってらっしゃい柚子くん。また夕方ね。」


 こうして私の一日が始まる——。




 fin

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天野蒼色の朝 栄養剤りぽべたん @ripobetan

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