第9話 ハルト、家を買う
「見た目は結構いい感じじゃん」
大家に勧められた家に着いた。一般的な民家だ。二階建てで風呂とトイレ付き。
「これで年間2万G。安すぎるな」
もちろんこんなにも安いのには理由がある。
まず長年使われてこなかったので家中がめちゃめちゃ汚い。実際にドアを開けてみるととてつもない量の埃が舞っていた。
「こりゃ掃除が大変そうだな」
買っておいた掃除道具を使って軽く掃除を始める。この家の広さを考えると、1日かけても終わりそうにないな。
しばらく掃除を続けると奥の方でカサっと音がした。俺はおもわず大きく驚く。
「なんだネズミか……」
おもわず勘違いしてしまった。そうこの家は事故物件である。それが安い大きな理由だ。詳しくは知らないが、どうやらこの家から1人の死人が出たらしい。
「まあ、幽霊とかいないよな」
正直幽霊とか妖怪とかは胡散臭くて信用していない。なので事故物件と知っていても購入した。まあそうとはいっても少しは意識してしまうが。
「進めるか……」
玄関あたりの掃除を終えた俺はリビング、キッチン、トイレ、風呂と1階の掃除を終えた。階段を登って2階に上がる。2階は3つの部屋に別れていた。俺は1番の部屋を開く。
「個室か? 家具とか置いてあるんだな」
机や椅子、ベッドなどが置いてある。ベッドの布団があまりにもボロボロだったので捨てることにした。代わりに野宿の時に使っていたダンボールを敷く。寂しいがもう遅いので布団は明日買うことにしよう。
「最後にもう1つの部屋だけ掃除するか」
部屋をでて向かい側の扉を開く。ここはどんな部屋だ? 何もない。
「ん? あれはなんだ?」
目を凝らすと部屋の隅に何か本のような物が落ちていた。近づきてそれを広いあげてみる。
「これは……」
何が落ちていたかは言わないが、それはこの世の男子全員が求めるものだった。これは部屋に持ち帰ってゆっくり眺めよう。
俺は軽く部屋の掃除を終えて自分の部屋に戻る。そしてさっき拾った本を広げた。
「さてと……賢者にでもなるかな」
これは素晴らしい。今まで2次元の世界にしか登場しなかったキャラが3次元として載っている。これ以上に素晴らしいものはなかった。
「そういえばティッシュねえな。何か代用できるもの……」
コンコン。
ドアが叩かれた音がした。俺は即時にズボンをあげ本をベッドの下に投げ込む。そしてそのままベッドにダイブした。その間わずか0.3秒。妹との格闘で何度も鍛えてきた結果だ。
俺は勝ちを確信してドアの方を向く……
「え?」
この家って俺以外に人いなかったよな? じゃあさっきの音は……
全身に鳥肌がたつ、俺は音の正体を確かめようとドアを開けた。
「何もいないな」
さっきの音は気のせいだったのだろうか。恐怖心が一気に消え去り、ベッドに戻って眠りについた。
「んーまだ夜か……」
段ボールの布団はやはり寝心地が悪い。やはり快眠とはいかなかった。
「でも寒くないだけましか」
再び眠りにつこうと段ボールを被った。そのとき、ベッドに何かがあたった音がした。
「なんだ!?」
再び恐怖心がめばえる。どうやら音はベッドの下からなっているようだ。恐る恐る下を覗いてみるとそこには知らない男がいた。
「ぎゃああああ!!!」
俺は部屋から飛び出て向かい側の部屋に入り鍵をかける。
「な、なんだったんだ今のは」
幽霊? ま、まさかそんなことがあるわけが……でも今の状況を説明するにはそうとしか思えなかった。
「とりあえず今日はここで夜を明かそう」
床に座り込んで部屋を見渡した。
「えっ」
おもわず絶句した。何で、さっきはこんなのなかったのに。
今俺の目の前には仰向けで動かない人がいた。明らかに顔が逝っている。死体?
「いやだぁぁぁ!!!」
その夜、ハルトは家を飛び出し、ギルドの外で夜を明かした。
「てことがあったんだ。もうあの家には戻れないよ……」
日が登り人々も増えたため少し安心し、このことをパーティーメンバーに話した。
「ハルト。お前そこ呪いの家じゃないのか?」
ジークが深刻そうな表情で尋ねる。
「え、なんだそれ」
「あんた呪いの家に住んじゃったの!? まずいわよ! 早くなんとかしないと」
「そんなに焦ることはないだろ。なんだよ呪いの家って」
ジークとセレナが慌てふためくように話しかけてくる。確かに怖い思いをしたが別に身に異常はないのだ。そんなに焦ることなんてないだろ。
「いいハルト。よく聞いて? あんたが住んだ呪いの家っていうのはね……住んだ人は3日以内に死ぬの」
俺の異世界ライフは終盤にさしかかったのかもしれない。
妹に会うために魔王を倒すと決心した俺だがチートもない上に最弱ステータス。集めた仲間も残念なやつらばっかりで、こんなパーティーで魔王は倒せるのだろうか。 丸鳩 @MArubato_1212
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