第8話 ダンジョン攻略②

「これどうする?」


 しばらく時間が経ち、少し冷静さを取り戻した俺は皆に問いかける。


「待ってくれ。今からギルドに報告をする。少し静かにしてくれ」

「え、でもどうやって?」


 するとジークはステータスカードを取り出した。しばらくカードを触った後耳にカードを押し当てる。


「もしもし? ギルドで間違いないですか? 今事故でダンジョンの中に閉じ込められているんです。救援をお願いします」


 あのカード電話もできるのかよ! 通信状態も悪くなさそうだし、今の地球よりも圧倒的に便利だな。


「何をするも何もできることはない。ここでしばらく待とう」

「それよりもハルト。あのローラの事についてなんだけど……」


 そういえば2人には説明していなかったな。いい機会だしここで皆に伝えておこう。


「実はな──」




 ゴブリンを倒しに行った時のことを簡単に2人に説明した。


「なるほど。つまり身に危険を感じたときにあんな状態になるわけね?」

「どんな体の構造してるんだ? 起きたら1回聞いてみるか」

「ちょっと待ってくれ。ローラは出会った時に何かにすごく怯えていたんだ。ここで掘り返して精神を傷つけてしまうかもしれない。ここはローラから話に来ることを待とう」


 2人は沈黙したまま頷く。どうやら納得してくれたみたいだ。


「私まだローラの事について全然知らないのね……」

「何言ってんだ。そんなの当たり前だろ。まだ会って数日しか経っていないんだから」

「そういえばそうだったわね。ここ数日の内容が濃すぎて勘違いしちゃった」


 セレナが少し照れたように続ける。


「ほら私って欠点が酷いじゃん? だから今まで誰ともパーティーを組んでくれなくて、1人で冒険者として活動していたの」


 そういえばそうだったな。俺がパーティー解散を持ちかけようとしたときにすごく焦ってたしな。


「だから今こうやって皆とパーティーを組めて、一緒に冒険できて、本当に……」


 照れ臭くなったのかセレナはそこで喋るのをやめた。そういうのやめてくれよ、ちょっとこっちまで恥ずかしくなってくる。


「だ、だから! 絶対にパーティー解散なんて言わないでよ? そんなこと言ったら絶対に許さないからね!」

「言わないから、これからもこのパーティーで活動していこう。な? ジーク」

「ん? まあ……そうだな」


 ジークは何故か少し曖昧な返事をした。少し照れ臭かったのだろうか? そのときの俺は深く考えることをしなかった。


「うーん……あれ皆さん。こんな所でどうかしたんですか?」

「お、ローラ目覚めたか」


 体を起こして周りをキョロキョロとする。状況を把握したのかあたふたし始めた。


「え、これどういう状況ですか? なんでこんなことに!」

「このセレナっていう馬鹿がやらかした。文句があるならこいつに頼む」

「え!? いやそれは元々……」


 セレナはローラの姿を見て喋るのをやめた。言いたいのは分かるがここは我慢してくれ。


「もう救援要請はしている。しばらくはここで待機だ」

「でもこの瓦礫の量だと、取り除くのにも相当時間がかかりそうですね」


 セレナの魔法による爆発の威力は半端じゃねえ。その分瓦礫の量も多くなる。


「ねえハルト。ちょっと寒いからあんたの上着貸してくれない?」

「お前はちゃんと反省しろよ! ていうか俺も寒いんだよ! 我慢しろ!」

「大丈夫だハルト。俺が抱きしめて温めておく」

「何も大丈夫じゃねえよ! あぁまずい! ジークと密閉空間にいることが1番の問題じゃねえか! 早く助けてくれえ!」


 結局セレナとローラの目があったからか、閉じ込められている間に襲われることはなかった。



~3日後~


「まずい、そろそろ限界だ。死んじゃう……」

「もう嫌! 逝っちゃう! お願いハルト外に出して!」

「ややこしい言い方すんじゃねえよ……」


 もう突っ込む体力すら残っていない。もう3日何も口にしておらず、そのうえ寒さも襲ってくるのだ。ローラもジークもセレナも俺もそろそろ限界も近い。そう思ったときだった。目の前の瓦礫から光が漏れ出る。


「ハルト達! 大丈夫か! 今すぐに助けるからな!」

「ニールさん!」


 思わず涙が溢れ出た。ありがとう……本当にありがとうございます……

 いつもの俺なら神様に深く感謝していた所だったが、この世界の神はクソ野郎のため、勝手にニールさんを神ということにしておいた。





「ぷはぁ! 生き返るぅ!」


 俺たちは3日ぶりの食事を楽しんだ。今まで体験したことのない美味さだ。これを超える味はきっとないだろう。


「にしてもよく生きて帰ってこれたなお前ら。俺なら間違いなく死んでたぜ! だっはっはっは!」

「ローラが適度に回復してくれましたからね。本当にありがとうなローラ」

「いえいえ、パーティーとして当然の事です」


 なんやかんやあったがローラをパーティーの引き入れた判断は間違っていなかっただろう。いやローラがいなければそもそも閉じ込められなかったのか?


「何はともあれ生きて帰ってこれて本当によかったわね。あ、店員さん! 唐揚げ1つ追加で!」

「おいお前そんなに頼んで大丈夫なのかよ。俺たちダンジョンで何の成果も得られなかったんだぞ?」

「あ、そういえばハルト。瓦礫を撤去しているときに見つけたんだが」


 するとニールさんは懐から拳くらいのキラキラとした石を取り出した。


「多分崩れたと同時に出てきたんだろう。ほら受け取れ」

「え、いいんですか!? ありがとうございます!」


 やっぱこの人神。一生付いてく。


「よしお前ら! これを売って3等分するぞ!」

「ちょっと待って?」


 セレナが急に話を止める。


「どうしたんだ?」

「いや4等分でしょ? 言い間違えたけど」


 は? 一体何を言ってるんだこいつは。


「3等分であってるよ。お前の分はナシだ」

「なんでよぉ! 私のおかげで見つかったっていっても過言じゃないのよ!」

「お前のおかげでこっちは三途の川渡りかけてんだよ! 大体お前事件起こした犯人のくせに『寒い~』とか『お腹減った~』とか言いやがって! そんなの皆同じなんだよ! 罰としてお前は1週間報酬抜きだ!」

「まってハルト! お願いします! もう貯金がないんです! なんでもしますからぁ!」


 そんなこんなで話はもつれ、最終的に俺の取り分の半分をあげる代わりに1週間言うことを聞いてくれるという契約を交わした。1週間こき使ってやるからな。覚悟しとけよ。


「さてと行くとするか」


 所持金が増えた今、俺がやりたいことはただ1つ。家の確保だ。もう野宿はこりごりだ。


「行くぜ不動産!」


 

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