第五話
「よし、帰ろう。今日はここまでだ」
「いいんですか? 証拠探ししなくちゃ。あとちょっとで全部解決ですよ?」
「だってもう夜だよ。続きは明日やろう。残業組以外はもう帰り支度してる頃だから、動ける鑑識はもういないし。急がなきゃ被害が拡大するような案件でもないし。お腹すいたからご飯食べたいし」
「よっしゃー! 先輩のおごりっすね? 俺、肉がいいです!」
「肉かぁ……。最近もたれるんだよなあ。食べきれないかも」
私がぼやくと、田島がいつになくキリッとした顔で宣言する。
「もし無理そうなら、残りは食べてあげますよ」
調子のいいやつめ。苦笑いを浮かべながら、私は荷物を手に取る。
なにはともあれ、一人の命を救えたのだ。今日のご飯はおいしいだろうと、ちょっと奮発するつもりで夜の街へ繰り出した。
だが、しかし。
残念なことに、感染対策のために飲食店は店じまいを始めており、入れる店が一軒もなかった。
私たちは空きっ腹を抱えて歩く羽目になり、困った末に一つの結論に行き着く。
アパートのドアの前に立ち、ピンポン、とチャイムを鳴らすと、すぐに返事があって扉が開く。
私たちの顔を見るなり飯田くんは嫌そうな顔をした。
「なにしに来たんだ」
「ご飯作ってもらおうと思って。最近凝ってるんでしょ? ちょっといいお肉買ってきたんだ」
「ちわっす! これで腕をふるってもらえれば! ゴチになります!」
「外食ならもっと他にあるだろ」
「ないんだなこれが。もうどこも閉まっててね」
「俺らもうおなかペコペコなんですよー! 助けてください!」
飯田くんはため息をついて肩をすくめると「泊めないからな。終電までには帰れよ」と私たちを家にあげた。
犯人は家政婦? タイダ メル @tairanalu
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