第8話 

この、獣人たちの国はいずれ災害に見舞われるらしい。

過去にも同じように災害が起こったという。

しかし、”守護者の予見”の特殊付与効果を持った魔法石の力によって国は滅亡せずに済んだそう。


そして今、僕が守護者として求められている。


「あの、、、。今回の災害がどんなものかってなんとなくでも分かりませんかね、、、?」

「それはかなり困難だ。前回の災害ではまじない師の存在も予見し、普段の雨期と異なる、”災害”を見抜いたそうだ。」

「そうなんですね、、、。」


正直不安はある。

もう神ではないから死ぬ時は死ぬ。

もし自分が死んでしまったら、魔術でみんなを平和にすると言う、彼女との約束を破ってしまう。

それに彼女のような人間をもう作りたくない。


だから、僕の回答は決まっている。


「僕でよければ、この国を救って見せます!!」



アリアはというと、僕らが話し合っている間に産業区にある、宿を取ってくれていた。

これまでまともに寝れておらず、疲労が蓄積されまくっていたが、良い宿をとってくれた。

なんでも冒険者や行商人の疲れを癒すことに専念しており、僕にはうってつけの場所だった。

風呂、トイレ別、大の字をしてもはみ出さないベッド、機密性あるくせに、空気の循環機能抜群の窓。

自分が疲れていたこともあったが、ここには星5をつける。

、、、アリアには感謝しないとな。



改めて自己紹介をしましょうかな。

僕の名前はヘルメと申します。

元の世界にいたときは魔術神として仕事をしていたけれど、リストラされて、異世界に飛ばされました、、、。

そんな僕ですが、一人弟子が出来ました。

アリア、と言う女の子です。

彼女は獣人の国の族長の娘。

可愛がって育てられたせいで、魔術など危険なことは教えてもらえないものの、いつかはたくさんの魔術が使えるようになりたいとのこと。

今日はそんな彼女に魔術を教えるため森の奥までやってきました。


「こんなとこまで来たのはお父さんといる時だけだよ、、、。」

「怖いのか?」

「べ、別に!そんなことないよ、、、。」

「あっそ。」

「あ!馬鹿にしたでしょ!師匠ぉ!っておいてかないで!!」


こいつといると面白いな、、、。

僕が弟子を取ったのはこれが二人目だがなぜこうも似ているのだろうか。


「師匠!前!魔物が出てきた!」


視線を前にずらすとそこには狼によく似た魔物がいた。

魔物の体の体毛がまるで水の中のように波打っている。


「ウォーターウルフか?」

「うん、そうだよ。」


巨大樹の街から出る時に魔物の種類についてはよく聞かされた。

実物を見るのはもちろん初めてだが。


「こいつは群れで行動するはず。でも一匹だけ、、、か。」


怪しい。

他にも仲間がいるのではないかと不安になる。

そんなことを考えながら気配を探していると、なぜか人間のような気配を感じ取った。

おそらく獣族。

僕のことを守護者として疑っている連中が見に来たのであろう。

大きな魔法を使って驚かせたりした方が良いのだろうか。


「アリア、おそらくこいつは群れてる。今から目の前にいるやつを倒すが、その後も俺から離れるなよ。」

「わ、わかった。」


ウォーターウルフがどれだけ群れるかは知らないが、やれるだけやって商人に売ればいい。

お金があればできることも広がるし。

おそらく初手のやつの反応で決まる。


「火炎牢獄!!!(フラームプリズン)」


ボッ!とウォーターウルフを中心に炎の渦ができる。

僕の手のひらから魔力が高熱の炎となって出ていく。

ウォーターウルフは足掻こうとするがもう外へは出れない。

火炎牢獄は地上だけでなく地下にも作用する。

穴を掘って逃げようとしても無駄なのだ。

僕はそのままコンガリッチになって終わると思っていたが、そいつは、、、。


「ウオオオオオォォォォォォーーン!!」


やっぱり呼んだ。

仲間を。

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最強の神様、リストラされました さじ @sajisaji_310

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