自動延長
翌日、彼女が帰った後の部屋で、俺はパソコンを起動した。ネットオークションサイト「
「これでよし……と」
例の廃墟で採集した幽霊を、オークションに出品した。タッパーに貼った札にはその廃墟のある市の名前を書き、その下に二十三歳女性と書いた。三千円スタート。さぁ、今度は売れるか。今月は出費がかさんでいるので、なるべく落札されてほしい。
次の日。大学に行く前に、スマホで出品リストを見た俺は驚きのあまりスマホを落としてしまった。
「は……ウソだろ……」
三千円で出品していた幽霊は、一日で一万円につり上がっていた。こんなこと初めてだ。目をこすって何度も値段を見たが、やはり「10000円」と表示されている。どうしてこんな商品に、一万の価値が発生するのか
それから、俺は通学中も、講義中でも、しきりにyohaaオークションを確認した。幽霊の価格はどんどん値段がつり上がる。帰宅する頃、幽霊は二万を突破してしまった。
幽霊の値段は、なおも上がり続けた。オークション終了間際には、五万円をゆうに超えていた。もうオークションを見るのも怖くなって、その日はオクの終了を見届けないまま逃げるように寝てしまった。
翌朝……俺は恐る恐るパソコンを起動して、出品リストを確認した。
「……は?」
オークションは、終わっていなかった。いつもデフォで自動延長をオンにしているのだが、終了間際からずっと小刻みに入札が繰り返されていて、そのたびに終了時間か自動延長されていたのだ。当然、値段も上昇を続けている。
焦った俺は、入札参加者を確認してみた。見てみると、「ghost」「spirit」「specter」「phantom」というユーザーが代わる代わる入札している。どれも取引実績はゼロだ。
ユーザーネームは不気味だが、取引ゼロはイタズラ入札の可能性が高いのではないか……いや、イタズラだとしてもおかしい。自動延長され続けているということは、彼ら四人は休む間もなく入札していることになる。そんな手の込んだイタズラを、一体誰が……?
あれから一か月……今も、幽霊の値段は小刻みに上がり続けている。
幽霊オークション 武州人也 @hagachi-hm
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