企画入賞レビュー「センス・オブ・ワンダー」

読んでいてニヤニヤ笑いが止まりませんでした。
これほど個性的で規格外の世界観を有した作品は滅多にありません。
ラーメン屋で相席したオッサンと女子大生。彼らが食事をとりながら淡々と身の上話を語るだけ。それだけなのですが。
これが面白い! なぜかと言えば彼等の生き様が型にはまらぬ破天荒なもので、聞いていてまったく退屈しないからです。初めこそタイトルにも有る通り「陰気な女性」が暗い顔をしている理由に会話の焦点が絞られるのですが、どうせ皆さんはそんな退屈極まりない恋バナからすぐ興味をなくしてしまうに決まっているのです。
だって、オッサンの話の方が遥かに面白いんだもん。
いや、陰気な女なんかどうでもいい。お前は何者なんだよ?

平穏な日常が徐々に崩れ去り独自のギャグ空間が侵食していく様は、一見の価値ありです。やはりコメディというものはもっとも作者のセンスが問われるジャンルであり、凡人には越えられぬ一線があるのだと感じました。

ラーメン屋の相席、そこは人生が交差する場所。
年齢も性別もまったく異なる二人が、ひょんなことから意気投合し、ちょっといい感じになる。単にギャグの切れ味が良いだけではなく、そうした設定の妙を存分に発揮している点も素晴らしい。これぞ大人がたしなむダンディなラブコメと言えるでしょう。
そして、どこか投げやりとも感じるB級映画みたいなオチ。
作中で賛美された通り、つまらないB級映画しか作れない輩はセンスがないと。
B級の空気で面白いものが作れてこそ本物なのだと。
そうした信念と自信があるからこその大胆な選択に思えます。

そう、センスが並外れているのです。それ故に入賞。
退屈な日常を忌み嫌う貴方にこそ、是非!