かつて勇者として魔王を倒し、人の王となった男が、息子を連れて出たとある夜のお話。
王から息子への語りかけの形式で綴られた、魔王討伐後の世界を描いた異世界ファンタジーです。
もうとにかく不穏!
平和な世界のはずなのに、のっけからヤバげな空気感がもりもり滲み出ているのがもうすごい。
こちら(読み手)がまだ幼いであろう子供の立場であることもあり、大変そわそわハラハラしながら読みました。この緊迫感!
物語の内容に関しては、ネタバレになりそうでちょっと触れづらい……。
のですけれど、とりあえずタグでチラ見えしている部分はオーケーと思って触れるのであれば、「崇拝」感がとても好き。
語り手から明かされる真相。事実関係はともかく、その価値判断のような部分に関しては、彼自身の崇拝ぶりが大きく影響していて、それだけに信用ならない感じがひしひし伝わってくる。
仮にその言い分を理解したとしても、それはそれとしてどうあれ『敵』とはっきりわかる、この人物造形がとても素敵。
最後なんかはもう、こう……。
じわじわと広がってゆく絶望感のようなものが楽しい作品でした。