第2話 祖母の話

《《》》 夏海に金魚が見えるようになって2週間が経った。驚くことに、金魚が見えるようになってから高熱を出すことはなくなったのだ。医者からは、

「もう退院しても良い」と言われて夏海は、退院することになった。

久しぶりの外に出て太陽が眩しい。

退院して久しぶりの家。とても居心地が良い。玄関で靴を脱いでいると、家の奥から凄い勢いで、

わんわん!

と飼い犬のマルチーズ、ポコちゃんが私に飛びついてきた。嬉しいのか顔をペロペロと舐めてくる。

「わかったわかった。ただいまポコちゃん。今おやつあげるねー」

夏海は、ポコちゃんを抱えてリビングに向かいおやつをあげた。すると、

ぶくぶく チリン

また、あの音が聞こえた。なんと、ポコちゃんの瞳の中に金魚が泳いでいたのだ。

「え、!?」

その金魚は、じっと私のことをみて

口をパクパクしていた。

ゴボゴボ

また、一瞬にして消えてしまった。

その夜、私はその金魚のことを考えて

眠れなかった。

そして、あっという間に夏休みにはいった。私の家は、毎年恒例で祖母の家に泊まりにいっていた。祖母の家は森の中にある大きく立派なお屋敷だ。昔、先祖が事業で成功したそうだ。私はそんな家が好きだった。何故か年中藤の花と菊が咲き乱れて、夏でも風が吹いて涼しかった。

_その後祖母の家

祖母の家に着き、門が開くと数十人の家政婦達が出迎えてくれた。家の中に入ると祖母(清枝)が出迎えてくれた。

「いらっしゃい。久しぶりだね

中に入りな。」

四十八畳のとても大きな居間に案内され、母と祖母が何やら話し始めると、

私はいつもこの大きな屋敷を散策する。毎回、周り切れないので祖母の家に来ると少し楽しみにしているのだ。長い廊下をしばらく歩くと見たことの無い部屋に着いた。そこは、何かを祀っている様な物が沢山あった。

「ん?金魚…?」

そこにあるものは、全て金魚が彫られていたり、金魚の絵が描いてあるもの

だらけだったのだ。

「あ…。天井にも」

天井にも、お寺にある天女や龍の絵のように金魚の絵がかいてあった。

「なんで…金魚?」

金魚がありすぎて、混乱していると、

後ろから声がした

「こんな所で何をしてるのです?」

後ろを向くと、そこにはベテランの

家政婦、松野さんが清掃用具を持って立っていた。

「あ、ちょっといつもの散策を…」

松野さんは、この部屋に入ってくるなり掃除を始めた。私は、ベテランの、

松野さんならわかると思って金魚の事

を聞いてみることにした。

「松野さん。なんでこんなに金魚があるのですか?」

すると、

「私もよく知らないのですが、藤原家

(夏海の苗字)は金魚を祀っているらしいですよ。詳細が知りたいのであれば、奥様に聞くといいですよ。」

ありがとうございましたと、お辞儀をして足早に、祖母のところに向かった。丁度、母との話が終わり縁側に座って庭を眺めていた。祖母の隣に座ると祖母が、

「どうしたの?夏海ちゃん」

私は早速祖母に話し始めた

「おばあちゃん。さっき家を散策してたら金魚がたくさんある部屋があったの松野さんに聞いたらうちは、金魚を祀って居るって教えてくれて…金魚について教えてくれない?」

すると、祖母は真剣な顔で話し始めた

「夏海ちゃん。松野さんからも教えてもらったと思うけど、うちは金魚を祀って居るの。昔々心が澄んでいるひとには瞳の中に金魚が住み着くと言われていたの。

何故か、藤原の血が入っているひとはみんな他人の瞳の金魚が見えるの。大体、夏海ちゃんの年頃から見えるようになると言われているの。夏海ちゃん最近金魚をよく見かけなぁい?」 

祖母の言葉にはっとした。

最近、窓やポコちゃんの瞳にいた金魚の事だとすぐわかった。

すると、祖母が言った

「そうそう、その金魚は幸運を呼ぶこともあれば不幸にする力を持っているから気をつけてね。金魚を見かけても

雑にあつかったり殺したりしたらダメよ。呪われるからね。でも、不幸や

呪ろいから守る力もあるのよ。」

と、にっこり笑って教えてくれた。

私も、笑ってみせたが…

なんだか嫌な予感がするのは何でなんだろう。

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瞳の中の金魚 ririn/(・∀・) @ririn_6112

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