第2話 エピソード2 「トキオ」
Welcome to The Mirror of Life
(パネル画面に映し出された、CGの声)
AI「ミラーオブライフの世界に、ようこそ
当サービスでは、あなたの人生の一コマを、鏡に映し出し、あなたの知りたい、
確かめたいという思いを叶える、お手伝いを致します。
一つは、過去の鏡。
あなたの戻りたい過去の瞬間に、お戻りいただける、鏡です。
もう一つは、未来の鏡。
あなたの未来を映し出しますが、どの場面が出てくるかは、指定出来ません。
さぁ、あなたはどちらをお選びになりますか?」
(小さな、クーンと言う犬の鼻を鳴らす、甘えるような声)
AI「大変申し訳ございません。もう一度、お話ください」
(同様に、犬の鼻を鳴らす音と小さなワンと鳴く音)
AI「良く聞き取れませんでした。もう一度お話ください」
(犬が小さくワンワン、鼻をくーんと鳴らす)
AI「大変申し訳ございません。お客様の言語に対応しておりません。只今、マイクロチップからの情報を受信いたしましたので、確認及び分析致します。もう少しお待ちください」
(犬のクンクン鼻を鳴らす音と、ワンワンと頼りない鳴き声に、かぶさるように)
犬「トキオの父ちゃんがいないの!トキオ分からないの。父ちゃん!父ちゃん…どこ?(クーンクーンと犬の鳴く声)・・
トキオ飛び出したの。トキオ怖かったの。・・・・トキオ、ここ知らないなの……ここ、どこ? トキオ・・トキオ父ちゃんに会いたいの。 父ちゃん寂しがってるの。トキオがそばにいないと、父ちゃん悲しむの。寂しいって言うの!・・・トキオも悲しむなの。
父ちゃんの匂い嗅いでここまで来たよ。トキオえらい!(得意気に言う。自信満々にワンと鳴く)トキオえらいって父ちゃんも言うよ!頭撫でるよ。(はぁはぁ言いながら、尻尾を振るトキオ)
(トキオの散漫な記憶。クーンと寂しそうなトキオの声)
トキオ、猫のあずきをいじめたなの。あずきが、あずきの母ちゃんとばっかり遊ぶから。
トキオ、母ちゃんいないの。トキオを産んで少ししたら、いなくなっちゃったの。
トキオは、トキオは、母ちゃんの匂いしか覚えていないの。
トキオは父ちゃんの小屋に、住んだの。父ちゃんは、トキオと違うの。トキオは早く走れる。父ちゃん遅く走れる。父ちゃん足2本。立って走る。‥‥変・・・。父ちゃん沢山走るとコホッコホッって言うよ!ゲーゲーっても言うよ。水、水って言うよ。トキオも水、水って言うよ。・・・トキオお腹空いてるの。父ちゃんも腹へったて言うよ。
トキオ父ちゃんに会いたいの。直ぐに会いたいの!
ねえねえ、トキオの頭を撫でて!
トキオは・・・トキオは、一人は嫌だ」
(クーンクーンという悲しそうにトキオが鳴く声が重なる。
AI 「お客様の登録番号D 928C35992 田口慎様(人間)のペットとしてのご登録が
確認されました。当サービスへのご予約は、一人息子のトキオ様(犬)に、トキオ様の母犬をお見せしたいとのご要望を承っております。
トキオ様(犬)の母犬の骨格から音声再現のご要望も承っております。
CCTVからの情報により、田口慎様(人間・以下省略)はトキオ様を探しておられましたが、GPS機能により誘導され、只今この建物の近くまで来ておられます。
・・・田口慎様のインプラントマイクロチップの反応も確認いたしましたので、トキオ様(犬)の音声をお送りいたしましました。
ただいま、田口慎様のウエアラブルグラスからの音声をお預かり致しました。
トキオ様に、メッセージです」
慎「トキオ、(コホコホ、ゲーゲーと咳とむせる音がする)直ぐ行くから、良い子に、して待ってるんだぞ」
AI「トキオ様(犬)にもう一つ、メッセージをお預かりしております。
田口慎様の飼い主,田口真知子様(人間)からです」
真知子「トキオちゃん、ごめんね。慎が徘徊してるみたいなのよ。もう直ぐ、AIに誘導されてトキオちゃんのところに行きますからね。そうしたら、慎を連れて帰ってきてね」
(トキオ、クゥーンと返事を返すように鳴いている)
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参考資料
田口 慎 : 59歳 身長170cm
田口真知子: 55歳 身長160cm
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音声による物語を、以下のURL音声アプリ「spoon」のキャストにて聞くことが出来ます。
文章とは違った雰囲気をお楽しみいただけると存じます。楽しんで頂けると嬉しく思います。
https://www.spooncast.net/jp/cast/4505695
The Mirror of Life 欠け月 @tajio10adonis
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