The Mirror of Life

欠け月

第1話 エピソード1 「大切なもの」


(「デジタル社会形成基本法」活用政府PR動画用メッセージが流れている)


デジタル社会で生きる私達は、更なる利便性の高い世界を構築するために、

デジタル社会形成基本法に基づき、オープンで透明化された情報を新たな価値の創造やソーシャルインクルージョン、ダイバシティマネジメントの

促進発展を促し、官民一体となって日常の中に深く浸透し、皆様の未来形成に役立つデータ活用を目指してまいりました。



 (同様の英語でのメッセージ)

We live in a digital society, and in order to build a world of even greater convenience

Based on the Basic Act on the Formation of a Digital Society, we have been promoting the use of open and transparent information for the creation of new value, social inclusion, and diversity management.

We have been working together with the public and private sectors to promote and develop open and transparent information to create new value, social inclusion, and diversity management, and to use data to penetrate deeply into our daily lives and help shape the future of everyone.


(同様のフランス語でのメッセージ)

Nous vivons dans une société numérique, et pour construire un monde encore plus pratique

Sur la base de la loi fondamentale sur la formation d'une société numérique, nous avons promu l'utilisation d'informations ouvertes et transparentes pour la création de nouvelles valeurs, l'inclusion sociale et la gestion de la diversité.

Nous avons travaillé avec les secteurs public et privé pour promouvoir et développer des informations ouvertes et transparentes afin de créer une nouvelle valeur, l'inclusion sociale et la gestion de la diversité, et d'utiliser les données pour pénétrer profondément dans notre vie quotidienne et aider à façonner l'avenir de chacun.


(同様のドイツ語でのメッセージ)

Wir leben in einer digitalen Gesellschaft, um eine Welt mit noch mehr Komfort zu schaffen

Basierend auf dem Grundgesetz zur Gestaltung einer digitalen Gesellschaft fördern wir die Nutzung offener und transparenter Informationen für die Schaffung neuer Werte, soziale Inklusion und Diversity Management.

Wir haben mit dem öffentlichen und privaten Sektor zusammengearbeitet, um offene und transparente Informationen zu fördern und zu entwickeln, um neue Werte, soziale Inklusion und Diversitätsmanagement zu schaffen und Daten zu nutzen, um tief in unser tägliches Leben einzudringen und die Zukunft aller zu gestalten.




Welcome to The Mirror of Life


(パネル画面に映し出された、CGの声)


AI「ミラーオブライフの世界に、ようこそ

  当サービスでは、あなたの人生の一コマを、鏡に映し出し、あなたの知りたい、

  確かめたいという思いを叶える、お手伝いを致します。

  一つは、過去の鏡。

  あなたの戻りたい過去の瞬間に、お戻りいただける、鏡です。

  もう一つは、未来の鏡。

  あなたの未来を映し出しますが、どの場面が出てくるかは、指定出来ません。

  さぁ、あなたはどちらをお選びになりますか?」


男「両方とも、見たいんだ。過去も未来も、どっちもだ!」


AI「両方とも、ご覧になりたいのですね。かしこまりました。 

  ただ、両方見るには条件がございます」


男「料金なら、二倍払う!」


AI「申し訳ございませんが、それでは十分ではありません。

  条件は、あなたの持っている中で、最も価値あるものでお支払いいただく、

  と言うものです。それをご承知いただけるのでしたら、あなたのお望みを叶えて

  さしあげましょう」


(男の心の声:俺の持ち物で一番価値のあるもの?・・・ふん、せいぜいイタリア製のロードバイク位だな。いや、待てよ。俺の持っている中で、と言ったんだから、まだローンを払い終わってないバイクは、正確には俺の物じゃないのかもしれないな。あのバイクの頭金だって、あの子が持っていたモジリアーニのリトグラフを、勝手に売った金だったしな。

それが原因で、大喧嘩にもなっちまった。だとすると・・・ふっ(小さく笑う)何一つ価値のあるものなんか持てない、甲斐性なしの俺だから、あの子が愛想を尽かしたに違いないんだ。考えるまでもない。高価な物など、今まで縁がなかった俺だ。何を持っていかれても構いやしないさ。

それより、どうしても彼女が別れ際に言った言葉が知りたい。あの時、聞き返せずに別れたけど、ずっと気になっているんだ。最近は夜も眠れない程、後悔に苛まれている。別れた、本当の理由(わけ)があの言葉に、込められていたんじゃないかと。

そして、この先もう二度と会えないのか、それがどうしても知りたい) 


 男「分かった。好きにしたらいいさ。どうせ大したものは何も持っていないんだ

 し。ともかく過去と未来両方を見せてくれ」


AI「かしこまりました。それでは契約内容をもう一度ご確認の上、よろしければ、

  合意と書かれた文字をクリックして、生体認証スキャナーのグリーンライトが消

  えるまで、そのまま動かずお待ち下さい。 

 

 『(機械の声)Scanning Completed』

スキャンが完了いたしました。 それでは、右側の扉からお入りください。

ミラールームの中では、音声の指示に従って、映像をお楽しみください」


(しばらくして)


男「一体どう言うことなんだ!過去は深い穴の中を覗く様に何も見えず、未来は更

  に、真っ暗な闇だった!詐欺じゃないか!」


AI「先ほど、契約書において、合意の手続きを完了なされました」


男「ああ、同意したよ!だから、過去と未来を見せてくれるはずだったろ!」


AI「契約書には、Advance Payment つまり、先払いと書かれていました」


男「あ、、あぁ。後だろうが、先だろうが俺は構いやしない。なんなら全財産だっ  

  て、くれてやるよ!どのみち、大した財産は持ってないがな。

  俺の人生で最高に幸福だったのは、あの子と過ごした時間だけだったんだ。

  それ以外は、なんの価値も無い。だから、その最高の思い出の最後を、

  もう一度…み た か った・・・もう一度確認して、、、幸福を、

  取り戻せるものなら‥‥‥‥‥ま、まさか。俺の、俺の一番大切な記憶を‥‥」


AI「お分かりいただけたようで、何よりです。

  あなたの最も価値あるもの、それはあなたと以前お付き合いしていた方との、

  思い出だった様です。

  もう一つ、お知らせがございます。

  契約時における、生体認証において、あなたは心臓認証を選択なされています。

  それによる認証の不一致が確認され、原因は心臓疾患と判断されましたので、

  その旨を、あなたの登録されているドクターに、先ほどご報告致しました。 

  ドクターから緊急処置の手配がなされています」


(AIの声が流れる中、小さく、苦しそうな呻き声がバックに聞こえる。 しばらく呻いていたが、やがて静かになる)


 AI「大変残念ですが、発見が間に合わなかった為、あなたの未来は鏡に映し出せ 

   ませんでした。ご冥福をお祈り申し上げます。

   次の方、お入りください。ミラーオブライフの世界に、ようこそ」



音声による物語を、以下のURL音声アプリ「spoon」のキャストにて聞くことが出来ます。

文章とは違った雰囲気をお楽しみいただけると存じます。楽しんで頂けると嬉しく思います。


https://www.spooncast.net/jp/cast/4283858



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