お客さん

深夜の2時タクシードライバーの俺は呼び出された。

「こんな時間にめんどくせぇな」

タクシードライバーの一日の平均労働時間は15時間と過酷だ。

「この辺でいいのかな?」

俺は客から指定された場所に着いた。

「○○までお願いします」

客は消え入りそうなか細い声で言った。

「○○ですね、了解しました。」

俺は客にそう言うとアクセルを踏み車を走らせた。

しかしこんなに夜遅くになんの用事だ?

そう思った俺は客に尋ねた。

「お客さん、こんな夜遅くになんの用事ですか?」

すると客は小さい声で言った。

「殺したんです。」

それを聞いた瞬間車内の空気は凍りついた。

「殺したって、どういう意味ですか?」

俺は動揺を隠せなかった

「やだな、冗談ですよ〜」

客は言った。

「やめてくださいよ〜お客さん」

張り詰めていた車内の緊張が一気に解けた。

この客見た目とは違ってユーモアがあるんだな〜

「じゃあ本当はなんの用事ですか?」

俺は客に尋ねた。

すると客はまた小さい声で言った。

「殺すんです、今から、あなたを」

またかと思った俺は客に言った。

「またまた〜変な冗談ばっかりやめてくださいよお客さん〜」

するとすかさず客は言った。

「本当です、僕の妹はあなたの運転するタクシーに轢き逃げされました、その復讐をするためにこのタクシーに乗ったんです」

俺は二年前客の元へ急いでいた時に信号を無視して女を轢き、怖くなって逃げてしまったことを思い出した。

「ほんとにすみませんでした、だからどうか命だけは」

俺は必死に謝った。

「許すわけないだろ!」

客は声を荒らげて俺の首を包丁で掻っ切った。

車内に俺の血が滝のように流れ出す。

意識が朦朧とするなか狂気に満ちた客の顔だけが目に入る。

俺は最後の力を振り絞って言った。

「お客さん……」







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