僕は知っている
「あんたもう中学三年生なんだから勉強しなさい!」
ママがご主人様に怒って言う。
「うるさいな〜今日はもう十分勉強したよ〜」
とご主人様は言う。
僕は知っている。ご主人様は今日一秒も勉強なんてしていないことを。
他にも僕は色々知っている。
この間ご主人様が探していたアイスはパパが食べていたこと。
ママがパパに優しくする時はちょっとお高い洋服を買っていること。
「まったく、母さんはいちいちうるさいな〜、クロもそう思うよな〜?」
ご主人様はそう言いながら僕の頭を撫でてくれた。
いつもの優しくて暖かい手だ。
僕は知っている。
ご主人様はいつもママに口応えをするけど、毎年誕生日プレゼントをあげたり、ママが風邪をひいた時は自分まで元気がなくなったりするくらいご主人様はママが好きなことを。
僕は知っている。
永遠なんてものはないことを。
この幸せな日々が今日で終わることを。
僕は目を閉じる。
だんだん意識が遠のく。
ご主人様が慌ててママとパパを呼ぶ声が微かに聞こえる。
僕は知って欲しい。
この家族と一緒に居られて幸せだったことを。
この家族が大好きだということを。
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