詰め放題
食
爆弾魔
強い日差しが照りつける真夏のスクランブル交差点、俺は今日ここで大勢の人を巻き込んで死ぬ。
体に巻かれた爆弾はあと十分ほどで爆発する。
そうすれば全てが終わり楽になれる。
そう思うと俺の心臓はカタンコトンとただ事ではなく音を立てはじめる。
これが恐怖から来ているものなのかは俺には分からない。
1週間前俺は横領したという濡れ衣を着せられ会社をリストラされた。
俺は知っている、同期の吉田と内田が横領の計画を立てていたことを。
だがそれを告発する頃には俺の話を聞いてくれる人は一人もいなかった。
そして学生の頃から寄り添った最愛の妻と溺愛していた娘にまで愛想をつかされ捨てられた。
その瞬間、硝子が割れたようにおれの心は粉々に砕け散った。
ピピッと爆発まで残り十秒の音が鳴った。
その瞬間俺はスクランブル交差点の真ん中に向かって走り出した。
5、4、3、2
全てを吹き飛ばす一秒前、俺の頭の中に妻と娘が仲良く遊んでいる景色が浮かぶ。
これが走馬灯というものなのか。
1
どかん!という大きな爆発音とともに多くの悲鳴が俺の耳をつんざく。
そして大きな衝撃で俺は地面に倒れ込む。
消えゆく意識の中俺は満天の空を見つめる。
その景色はどこで見る空よりも綺麗だった。
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