3枚目-カワル ⑥


「な、なんだよ」

「岬先輩が振った…の間違いじゃないんですか…?」

「いやいや、俺が振られたんよ?」

「真面目に言ってるんですか…?」

「しょーもないプライドで、事実を捻じ曲げてどうするんや」

噂では、いまもどこか2人が惹かれあっているとあったが、これは言わないほうがいいのかもしれないな。

「噂では、今も2人惹かれあってるっていわれてるんですけどね」

言ってるし…。

「誰やねんそんなこと言ってるの」

「まぁ、あくまで噂ですし」

「今日の見たやろ?」

「見たからこそ聞きたいなって思ったんですよ。恒元さんに怪我させなかったのは、やさしさがあるからじゃないかって」

「…それくらいのセーブはするやろ」

「反動でお前も無傷じゃないかもしれな今では言いません」

俺からの反応に先輩は降参といった顔になった。

「あー、もうわかった」

岬先輩は、新しい酒のふたを乱暴にあけた。

「ないない。向こうと俺の家の関係が絡んでる可能性があるからな」

「家柄?」

「そ。梓のところの家は、知ってるよな?」

「はい、恒元家ですよね」

「そう、サジットの立ち上げに関係した家や」

「岬さんの家もでてくるんですか?」

「あれ、知らんかったか?父さん、ヘリオス係の歴史の授業でてくるけど」

「え!」

「どえらい大声あげて…。どうした」

「それって、岬智みさき さとし…!」

「おぉ。名前まで覚えてるのはなかなかおらへんよ!」

「岬智さんは、岬先輩のお父さん…なんですか?」

「せやで。ほれ。証拠」

写真の中のあの軍人は、岬先輩をかかえ、父の顔をしてる。

「俺の銃も、戦闘術も、戦術におけるギフトも…。ほれ」

「え…すご…。これ…。全部でいくつあるんですか…」

「数えたことはな。父さんのは、戦術や、情報処理系だからこっち側。そっちが俺のギフト」

先輩は色々なギフトを展開してみせた。

その展開して、俺らに見せているものもギフトなのだ。

それは普通に考えたら、魔法に近い。

俺のギフトなんか、くらべものにもならない。


憧れとして、姿を重ねていた2人が親子。

(これは勝てないわけだ。しかたない)

この事実を自分の中に落とし込む。

それなのに、驚きと自分への言い訳が生まれてぐるぐるとまわる。


「これって、ほぼヘリオスの技術や訓練で培ったギフトですかね」

「あー。せやなぁ。実生活でつかうもんは、こっちのやつかな」

「ヘリオスってギフトを展開するときの、サポートデバイスとかありますもんね」

「仕事的に必須ですよね」

「よく知ってるなぁ」

「これって…、実際みれたりしますか?」

「訓練のときには、見るようになるやろうな」

「で、話は戻るんですけど」

「くぁ!うまく話し逸らせたとおもったんに!!」

「逸らせてないですよ」

「なんやねん。詳しく聞きたいっていうんじゃないだろうな」

「聞きたいんですよね」

「はぁ。まぁこの状況でしっかり言うておくべきかもしれんな」


岬先輩は、たばこをだしながら、「吸ってもええか?」といった

俺と竹内は、どうぞとすすめる。

「噂でどういわれてるのかはしらないけど、俺と梓が付き合いはじめたのは、お互い好意をもってたからよ」

「好意ですかぁ」

「今の関係性だと、予想つかないよな」

「正直、そうですね…」

「梓がいまなんていうかは知らんけど。当時の俺は、梓と支えあっていけたらって、ホンマにおもってた」

素直な一言が刺さる。

「みんなが思ってる、サジットの梓になったのは本当に、ここ最近なんだよな。佐山はわかるやろ?」

「少なくとも、生徒会長になるときは…」

「先生からの推薦もあったしな。梓が生徒会長になってから、親から、その周りからの圧か、俺の存在が関わってるのか…、まぁ、解らんわけだが。急にサジットとしてって絡んでくることが増えて…。それで突然、振られたっていうわけやな」

「なるほど…。恋愛に親が介入ですか…」

「というか、歴史やなー…」

「そのあと、楓さんと付き合って、いまはフリーと」

「いや、俺の事知りすぎやろ」

「岬先輩は女性の憧れの人らしいですからね。けっこう噂はききますよ」

「噂ばっかり聞くのも、どうかとおもうけど」

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