第2章 第4話【やっぱり】
「真木君おはよー」
家を出ると、聖那がまだ眠そうな表情で待っていた。
お弁当を作るために早起きしてるって事を考えると、罪悪感が大きすぎる。
「おはよう。」
聖那が頑張っている中俺はと言うと、筋肉痛で身体がガッチガチになっていた。
「あ、真木君も筋肉痛?」
もって事は聖那も筋肉痛なのか…罪悪感が凄まじまいな。
「うん。全然寝れなかった……」
「せっかくいい身体してるんだから、ちゃんと動いといた方がいいよ?」
確かに、サッカーでつけた筋肉やら運動能力は落とさない事に越した事はないしな。
でも──
「それはお互い様では?」
「やっぱり痩せてる女の子の方が好き?」
聖那は自分の二の腕をつまみながら少し暗い声だった。
「そういう訳じゃなくて、一人で続けるって大変だから。」
そもそも、自分の見た目に気を使わない人間が他人の見た目に関してとやかく言うなんてありえない。
「あ、私の二の腕触ってみる?気持ちよすぎて人差し指でさわさわしなきゃ寝れないんだよね〜」
聖那はそう言いながらブレザーを脱いでシャツの袖を捲る。
真っ白で見るからにサラサラそうな聖那の二の腕が露わになる。
「いや、いいよ…寒いしちゃんと着なよ。」
「遠慮しなくていいのにー」
そう言いつつも鳥肌を立てている腕を制服に隠す。
そうして今日も昨日と同じようになんでもない会話をしながら登校する。
途中で鋭く冷たい視線を背後から感じたりもしたけど、振り向く事はできなかった。
「じゃあまたお昼にねー!」
「うん、また後で。」
昼休みとなり、聖那が三組の教室に来て俺の机の上にお弁当を広げる。
「じゃじゃーん!どう?」
見た感じは、色使いも品数も凄く丁寧に作られたお弁当って感じで、聖那ならやりかねないと思っていた重箱スタイルじゃなかった事にホッとした。
「さすが聖那って感じで綺麗。」
「でしょでしょ?でも、見た目だけじゃなくて味も完璧なのが、聖那クオリティなのでお食べ下さいませぇ〜」
中学生の時のバレンタインは毎年聖那から手作りのミニケーキみたいな物を貰ってたけど聖那クオリティは只者じゃない。
お弁当に入れるおかず定番の卵焼きを口に入れると、まずは出汁の香りが広がり、一度噛めば一層一層の食感が感じられる。そして、卵に混ぜられている明太子が丁度よすぎるバランスでピリッと来る。
「どう?美味しい?」
聖那は自信満々らしく、ドヤ顔で感想を求める。
「うん、めっちゃ美味しい。甘くないのも最高だよ。」
俺の感想を聞いた聖那は大きく息を吐き、ホッとした表情を浮かべていた。
まあ、誰かに自分の手料理を食べさせるなんてどれだけ自信があっても緊張はするよな。
「男は胃を掴めば離れないってお母さんが言ってたから張り切ったんだ〜」
ニヤニヤしながらそう話す聖那は、やっぱりどこか結愛みたいに幼くも見える。
「胃を掴まれたら好きって事?」
多分これは、俺の良くない性格だと思う。抱いた疑問をすぐに聞いて相手を困らせる事は今までにも何回もあったのに、直せない。
もちろん悪意はないけど、自分の気持ちを抑えられない人間はダメな人間だと思う。
何に関してもまずは自分で回答を出してから、調べたり聞いたりして解答をもらうべきところを俺は…
「んーこの人の料理が好きだからこの人と付き合いたいとかはないんじゃないかな。あくまで離れにくくするためって感じだと思うよ?」
それなのに、聖那は嫌な顔全くせずに親身になって自分の考えを話してくれる。
「なるほど。じゃあ俺はゴムみたいなもので胃を縛られて、それを聖那が握ってるみたいな感じか。」
だから俺は、聖那といると極限にリラックスできてるんだと思う。
「その通り!だから、ゴムが伸びるのを緩めるために近づいたり、たまに強く引っ張ってこっちに飛ばしたりするんだと思う!」
漫画でよく見る 「恋ってステキ!」みたいな表情を浮かべてそう話す聖那は、やっぱり結愛にも見えた。
「なるほどな〜あ、このグラタン美味しすぎない?」
「そ、それは…冷凍食品でして──ちょ、ちょっと隙間空いちゃったからどうしよっかなーって考えた結果だから、その…手抜きとかではなくて……」
「確かに、お弁当って少しでも隙間あるとすぐぐちゃぐちゃになるしなぁ〜朝にそんな考えが出てくるのすげぇ…」
「あ!そ、そうね?こちとら毎日やってるから任せなさいよ!」
「大尊敬致します。」
俺はただただ関心してただけだったけど、下校中に「ほ、ほんとはちょっと眠くて手を抜いちゃいました…」と聖那から告白を受けて、確信さた。
聖那と結愛ってめっちゃ似てる…
俺の事が好きな3人が、好きと言う気持ちを教えてくれるらしい ジャンヌ @JehanneDarc
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