それは、終わる頃に轟いた

ぽえーひろーん_(_っ・ω・)っヌーン

雷光のようにそれは


いつだって私は妬いている

メラメラと、青白く揺れる

嫉妬の炎を胸の奥に飼っている。


人目を避けるように

けれど、その存在を決して

完璧に隠す事が出来ないように。


煙が、登っていく

消せない炎の存在証明

もくもくと充満していく


心が煙たくなる、抱えられなくなる

やがてそれは私の心の強度を乗り越えて……


「——ねえ、なんで今日は

あの子と楽しそうにしてたの?」

「……え?」


こうして、醜い醜い呪詛として

聞くに絶えない嫉妬が溢れ出すんだ。


「ごめんね」

「謝らないでよ」


謝らないでよ、分かってる

私が変なことぐらいわかってる


「キミとも、もっと話すようにする」

「……嫌い」


やった、嬉しい、話してくれるって

私の方を向いてくれるんだ、やった


「そんな事言わないでよ

……ホントに嫌いになったの?」


「……うん」


嫌いなわけない、好き

好きなの、好きなんだよ


好きだからこうやって

めんどくさくなってんじゃん


「……なんで嫌いなの?」


嫌いじゃない

すき、すきすき


「だって、だってさ

かまってくれないじゃん」


「で、でもキミとだって

毎日ちゃんと話しているよ」


もっと話したいの

もっと一緒にいたいの

他の子を見て欲しくないの


「あっそ」

「……え、怒った?」


怒ってない!違うの!

わたしは、わたしは……!


そして


運命の時が訪れる


「言ってくれないと

分からないよ、キミが


何を考えてるか

僕には分からないんだ」


カッと

血が上って行くのを感じた

まるで火山の文化のように

吹き荒れんとする溶岩溜まり


勢いはとても強い、そこへ

哀れで愚かな小人の抵抗など

全くもって無力だった。


運命の時は訪れる

それは他ならぬ


「じゃあもう……

別れたらいいじゃん」


私自身の手によって


「……そっか」


自らのが招き入れた破滅とは

それ全く歓迎されはしない

むしろ、それだけはと


それだけは嫌だからと

暗闇を恐れる幼子のように

泣きじゃくりながら


必死にここまで来たはずなのに

それを終わらせたのは

私だったのだから。


なんでこんなことになったの?

どうして?私がクズだから?

私が上手くやれないから?

私が嫉妬しちゃうから?

彼はなんにも悪くないのに

彼はいつだって愛してくれたのに

どうして不安になるの?どうして


どうしてどうしてどうして

どうしてどうしてどうしてどうして

どうしてどうしてどうしてどうしてどうして


「だ、大丈夫……?」


「……やだよおおおぉぉ……別れたく

別れ、やだ……!すきなの……すき

別れたくないの、すきなの、信じて……」


「……うん」

「なんで?」


どうして俺も好きだよって

言ってくれないの?おかしい

いつも、そう言ってくれるのに……


「わたし、あなたの事がすきです

あなたが居ないとだめなんです


だから


捨てないでください」


現実は


「……そっか」


「……ごめんね」


「……僕じゃないと思うんだ」


現実は、残酷である。


「なんか、うん、そう思う

きっと僕じゃない人が居るよ


僕じゃ君を分かってあげられない

君の事なんてなんにも、分からない

どうしていいか、分からなくなったんだ」


「……すき、だよ?」


「忘れた方が良いよ

僕達、違うと思うんだ


別れよっか、僕達」


「そっ……か」

やだ、いやだ、別れたくない


「うん、そっか、そうか

別れる別れ別れ……いや、ん……」


嫌だって言うんだ

泣きながら抱きついて

胸でも触らせてあげて


それで、繋ぎ止めるんだ

始めてだってあげてもいい!


練習したの、したから

きっと上手だからせめて


せめて形にしたい

私のなかに貴方を

感じさせてほしい


「……じゃあ、帰るね」


引き止めるんだ


「もう、来ないの?」

「そうだね、連絡も取らない」


まだ、えっちもしてないのに

キスだってあんまり出来てない

手だって、ほとんど繋いでないのに


「じゃあ、さようなら」


1人分


重みの消えたソファの上

そっとテーブルに置かれる鍵

離れてゆく足音、風が通り過ぎる


……そこで


そこで終わっておけば

きっと良かったんだろう

最後まで本心を出せないまま


哀れに泣き崩れてしまえば

いっそ完膚無きまでに

失恋していれば


どれだけ良かったことか


私は


なりふり構わなかった

離れていく彼の背中に

結局、耐えられなかった


走った


空を切っていたその手は

前へ伸び、そして、掴んだ


彼の


背中


から回した手は前へと周り

腰の辺りを、優しく撫でて

を手のひら全体で感じる


そして


私は


「……しよっか」


破壊の言葉を投げかけた

希望の橋が落ちた——。




✱✱✱✱✱ ✱✱✱✱✱ ✱✱✱✱✱ ✱✱✱✱✱


ふわっ……と


こだわって伸ばしていた

触角が風に吹かれて躍動する。


普段なら直ぐに、修正の

ひと撫を加えるところだけれど

今はそんな事どうでもよかった。


そう


髪型なんてどうでもいい

彼の好みに合わせた嘘

もはや意味を失った理想像なのだから。


ちょっとぐらい崩れても

だからなんだって言うんだ。


目の前を通り過ぎる幾つもの

車のヘッドライトの光


それは、私の頬の辺りで

一際輝いては消えていく。


まるで、宝石店のダイヤの用に

醜くて見苦しい24カラットの涙は

しかし、誰の目にも留まることは無い。


深夜のバス停の

ベンチの上


そんな所でくたばっている

こんな私の事なんか誰も

気にかけやしないのだから。


「……いたい」


夜空の奥の奥、いつか

雷鳴が轟いていたあの向こうに

まるで呪いのようにうち放たれた言葉


失って、そして得た痛み

もう二度と訪れない痛み

最初で最後の、行為の証。


「いたい」


再び繰り返された呟きは

もはや呪いなどではなく

ただ、悲しみ故のものだった。


自ら、未練がましく求めて

光を見る間もなく潰えた

「復縁」という名の未来


何度も、何度も謝りながら

そそくさと衣服をまとめて

アパートの部屋から出ていく彼の姿。


そんなものが

最後の思い出だなんて

いっそ、いっそあの時


引き止めなんてせずに

呆けていれば良かったのに

などと思っている自分に腹が立つ。


彼は


初めて私が本気で

好きになった人だったんだ。


まるで映画のような出会いをした

誰に話しても、とても信じないような

運命的で刺激的で、ロマンチックな出会い。


この縁にはきっと意味がある

この世の誰も邪魔できない

2人だけの約束された未来がある。


恋愛なんてと、鼻で笑って

適当に付き合ってきていた私が

そう、確信できるほどのだ。


だから、だろうか

私は囚われていった

意味を追い求めてしまった


そしていつしか別れを恐れ

彼を繋ぎ止める事しか

考えられなくなった。


愛は、恐怖に変わり

不信となり責め立てる。


思い込んだんだ

浮気をするんじゃないかと

それが、良くなかったんだな。


「……はっ、アホらしい」


捨てられた?


いいや違う、私が捨てたんだ

捨てさせてしまったんだ


自分の手で壊した宝物だ。


こうして

家を飛び出して

ベンチの上で膝抱えて

たった1人で泣いてる私が

なんと哀れなことだろう。


……立ち直らなきゃ

じゃないと私が可哀想だ

彼への示しだってつかない。


無理やりに自分を鼓舞して

とりあえず現状を変えようと

泣き腫れた目もとを拭い


結んでいた髪を解き

決別の気持ちを込めて

髪型を変える。


区切りをつけるための儀式

それを終えた私は顔を上げ


これから進むべき道——無論ただの帰路だが——を見つめ、歩みを始めようとして


私は、驚くべきものを見た。


目に飛び込んできたのは


「待てやぁ!コラてめぇ!!」

「誰が待つか、バアアアアアーーーカ!」


追われている男と

それを追いかける男達5人

という、奇天烈な光景だった。


「逃げ足……はっや……」


思わず、そんな賛美の言葉が

飛び出るほどに男の走りは


まるで


夜の街を輝く

ネオンライトの光のように

眩しく、そして目立っていた……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

それは、終わる頃に轟いた ぽえーひろーん_(_っ・ω・)っヌーン @tamrni

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ