死の付添人は、物書きに。
あれから、何度目の夏だろう。
もう覚えてない。
僕は1人になって、孤独になった。
職場で付き合った彼女とはとっくに別れている。
ユイが死んだ、その事実を未だに受け止めきれないでいる。ユイがまだ何処かで生きてることを願っているんだ。
しかし、現実は迫っている。
ユイとの記憶が薄れていく。そのことを恐れ、僕は物書きを始めた。
ユイとのことを、全てを吐き出すように書き留めた。それで彼女のことを忘れることはないと思った。僕が死んでも、この小説を読んだ人が彼女のことを覚えてくれると思った。
物書きになってから、一年後、僕が書いた小説がベストセラーになった。
僕はあっという間に、地位と名誉、金、女、酒、あらゆるモノを手に入れた。
それなのになんで、僕の小説が売れれば、売れるほど、僕の小説は白紙になって、金になって、僕の心は空になる。なんも満たされてないんだ。それでも僕は縋るよ。生に。
ユイ、君のために。
僕は君のためだけに、小説書く。
いつかまた会おう。そして、あの海に行って、また花火を見よう。笑い合おう。それだけで僕は幸せなんだよ。
君がぼくのそばにいてくれるだけでいいんだ。
ああ...視界がぼやける...もう僕死ぬのかな...
『華火』が散る夜空に。僕は消える。
死の付添人 冬川雹 @to-toma
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