第11話 魍魎の恋
第11話
『少し昔話をしよう。勿論、あの死体の話さ。あの死体はね、双子だったんだよ。よくある話だろう?双子のどちらが死んで、もう片方が生き残る話さ。』
ああ、確かによく聞く話だ。
それで、無辜の罪悪感を抱く話も。
『だけど、あの死体達は違ったのさ。二人共、お陀仏な訳だね。本来なら流産で終わる結末だった訳さ。だが、諦めなかったのさ。あの死体達はね。』
「諦めなかった?」
「そうさ。もう一人、詳しく言えば君をこんな目に合わせた方は生きる事を願ったのさ。生物としての正しい本能、誠実な願いさ。で、もう一人の方、つまりあの欲情した獣畜生の方は一目惚れだよ、君に対してね。死んだ上でそんな感情を抱くとは、愚かにも程があるよね?どれだけ強欲で浅ましいのか。いやはや、人間とは測れない生き物だ。いや、死んでいるから人間ですらない怪物の間違いかな?まぁ、その化け物達の生きたいという願いと愛し愛されてたいという願いが混じり合って、片方の死体に取り憑いたのさ。』
「だから、死人憑き…」
しかし、俺に一目惚れか…
一目惚れかぁ……
何か嬉しい………
『で、奇跡的に生き返ったふりが出来たという訳さ!一つの死体に2つの霊魂が入ったからかな?生者として成立してしまったのさ!いやぁ、心の底から吐き気がするね。それはもう魑魅魍魎の所業としか言い様がないだろう?』
と、心底嫌そうな顔で告げる一花。
そして、溢れんばかりの憎悪を見せながら…
『死体が息をする?亡者が恋恋心を抱く?巫山戯るなよ、化け物が。それは生者の特権だよ。人は人のままで在れば良い。それが運命であり、この世界の理さ。なのに、あの怪物はそれを破ったのさ。それでいて、のうのうと生き続けようとまでしているのさ。本当に吐き気がするよ。どれだけ生者を、世界を侮辱すれば気が済むんだろうね?』
と、捲り立てる一花。
隠しきれない憎悪が、周りを侵食する様に世界が黒く歪んでいく。
彼女の感情が世界に反映するかの様に、揺らされていく。
ヤバい、何だコレ!!??
身体が、千切れっ………
「くっ…ああ……お前、先無の事が本当に嫌いなんだな?」
『はは、当然さ。アレは私達の天敵さ。人を犯し、人を喰らい、人を弄び、人を私達から離してしまう事を喜びとするこの世界の汚物さ。』
駄目だ、目が完全にイッてしまっている…
だが、世界を歪ませるのは止めてくれた。
はぁ、千切れるかと思った…
「先無の事は色々と解った。だから、聞きたい事がある。」
『ふふ、何だい?まぁ、予想はついているよ。私と君の『契約』についてだろう?」
「ああ、教えてくれ!」
『済まない。それは無理だ。それも『契約』に含まれているからね。』
「そうか…」
じゃあ、どうやって知れば…
『だが、君の後輩…可哀想な未來に聞くと良い。』
「なっ、アイツは知ってるのか?」
『ああ、勿論。……そろそろ、時間か。では、さよならだ。』
「ああ、色々とありがとう。」
…俺も帰るとするか。
『ああ、そうだ。今回は軽くしよう。私側から来た訳だしね。だけどね……』
…一花は嬉しそうな声でこう告げた。
『契約は守る物だ。』
「はぁ?うっ……」
あれ?腕が…腕が………
「右腕が動かない?」
そう、ピクリとも動かない。
…まるで、脱け殻の様に右腕が使えなくなったのだった。
続く
幼馴染に振られた上に女性恐怖症になってしまった件 クロスディアⅡ @crossdia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幼馴染に振られた上に女性恐怖症になってしまった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます