第10話 知らないという罪と知りすぎる罠
第10話
『全く、君は少し警戒心を持った方が良い。人間は確かに感情の制御すらままならない生き物なのは識ってるが、これじゃ少し単純過ぎるよ。違和感は感じていたのだろう?なら、その判断に従うべきだ。君の直感は概ね正解だよ。そういう力だからね。それに助けて欲しい時は呼ぶように言ったじゃないか。なのに、どうして呼ばないんだい?トイレで嘔吐を繰り返しながら泣いていた時は、必死に君の所へ行くのを抑えていたんだよ?その上、こんなお粗末な色仕掛に嵌まるとは。少しお説教が必要な様だね。いや、様じゃないね。確定事項だ。さぁ、早く家に帰るとしよう。ちゃんと場所を整えなきゃ大事な説教も無意味になるからね。さて、私の首周りに腕を通したまえ。何をするかって?お姫様抱っこさ。その方が君と歩いて帰るよりも効率的で早く帰れるからね。それともオンブの方が良いのかい?それとも猫ちゃんみたいに運ばれるのが好みかな?ん?どうしたんだい?私の肩を抑えて…』
さて、心からの本音をぶつけるとしようか…
「「話が長い!!」」
と、思わず先無の奴と言葉が被ってしまう。
しかも、先無の奴は思いっきりムカついてる様子だ。
ヤバいな、アレ…
先無が怒ると滅茶苦茶怖いんだよなぁ…
「相変わらず邪魔をするのね、疫病神。勝手に結んだ契約にかこつけて、今日はどんな横暴を働くのかしら?」
『横暴?それは君の方じゃないか。女でも強姦罪は成立すると聞いているよ?そんなに盛るとは、君は獣畜生なのかい?それに、私と劔はちゃんとした契約をお互いの意思で、はっきりと結んだ物だ。風評被害は止して欲しいね。訴えられても文句が言えない所業だよ、それは?』
「疫病神が何処に訴えるっていうのよ…」
この様子だと、どうやら先無も一花の事を識っているらしい。
だが、お互いの仲は良くない様だ。
それにしても、契約か…
…俺は一体どんな契約を結んだというのだ?
「とびっきり質の悪い契約よ。アレは唯の自殺行為。アイツがああな限り、この契約は果たされない。それを識っていて、コイツは貴方を助けると嘯いてるのよ。」
『それは誤解さ。私達は本気で彼を助力するつもりさ。私達は神様で、何でも出来る存在なんだよ?だから、早くそうなる様に援助してるのさ!待ち遠しいよ、全く。ああ、神様を続けていてこれ程までに最高な時は無かったよ。まぁ、あの子は別だろうけどね?』
どちらが正しいのだろうか?
どちらも正解な気がするし、不正解な気もする。
……………俺はどちらを信じれば良いんだ?
「疫病神め………うん、この場は引くとするよ。でも、覚えておいてね。私は必ず劔君を手に入れる!誰にも邪魔はさせないから!」
『せいぜい足掻くと良いさ、死人憑き。安心したまえ、その願いは叶わない。諦めて死者は死者と乳くり合って、腐乱臭を撒き散らしてると良い。』
「はっ、人を騙す事でしか人と関われない神モドキが良くほざくわね…」
と、俺の隣を車椅子に座り直した先無が去っていく。
俺はただ呆然として見送るしかなかった。
………………………………………死人憑き。
それは確か………
『君の考えている通りだよ、劔。ああ、全くもって大正解さ。いやはや、現実は何時だって残酷とは言うけれど、あながち間違いじゃないと思うよ。私達神様より慈悲がないのだからね!』
「じゃあ、つまり…アイツは……」
『ああ、死んでいるよ。ずっと、昔からね…』
続く
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