第9話 愛があれば
第9話
???side
愛しています。
貴方を愛しています。
ずっと、ずっと、昔から。
私は貴方の声で目覚めました。
私は貴方の存在で今が生まれました。
私は貴方のお陰で生きたいと思いました。
しかし、私はそれを許されなかった。
私は貴方の呼吸する姿が好き。
貴方が瞬きするのが好き。
貴方が匂いを嗅ぐ姿が好き。
貴方が喋るのが好き。
貴方が手を動かすのが好き。
貴方が歩いたり走ったりするのが好き。
貴方が勉強するのが好き。
貴方が起きたら寝惚けて目覚ましを勢いよく叩くのが好き。
貴方が疲れるとよく手を組んで眠そうになる所が好き。
貴方が好みの物を見つけると頬を緩ませてニヤけるのが好き。
機嫌が悪くなるとよく頭を掻く所が好き。
風呂へ入る時は思いっきり浸かった後に頭を洗うのが好き。
貴方が寝る前にラジオ体操をするのが好き。
貴方が国語や英語が得意で理系が少し微妙な所が好き。
特撮が好きで変身アイテムを買いすぎてよく怒られてるのも好き。
貴方が後輩に甘くてよく集られてるの好き。
貴方が貴方で居てくれる事が好き。
貴方が私を好いていてくれる事も大好き。
でも………………………………………………
「どうして、私を愛してくれないの?」
………私を好きでいる貴方は心の底から大嫌い。
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劔side
目の前に先無の様なナニカが居る。
車椅子に座っていてるが、ありとあらゆる全てが先無その物だ。
可愛らしいポニーテール、ちょっと、いや少し、いや割と、いやかなり悲惨な胸、滅茶苦茶エロい脇、細くて壊れそうな身体。
………うん、先無だ。
でも、何が違うと俺の直感がサイレンの様に告げ続けるのだ。
「あれぇ?どうしたの、貴方の愛しの先無だよ?ほら、やる事あるでしょ?」
「えっ?」
「キスだよ、キス♡お嫁さんにキスするのは夫の義務でしょう?」
「………………………………………はぁ!?」
何か唐突過ぎて固まってしまう。
いや、俺拒絶されたよね?
あれ、いつの間にか普段起きている症状が消えてる…
はっきりと先無だと認識するまで、吐き気が止まらなかったのに…
何か、可笑しい。
一体、何が起きている?
「ほら、早くぅ♡貴方のお嫁さんホッペにキスしちゃいなよぉ♡」
「くっ、コレはコレでキツい!」
コイツ、どれだけ俺をキュンキュンさせる気だ?
ヤバい、萌え死にしそう!
「はぁ?そんなのさせる訳ないじゃん!」
「えっ、ちょっ、まっ!?」
急に怒気を放ち、俺を押し倒す先無。
お前、車椅子はどうした!?
しかも、力強っ!?
身体がピクリとも動かねぇ………
「抵抗しないで、悪い子はこうだ!!!」
「いやっ、むぐぅっっ!?」
思いっきり唇を重ねられた。
キス、接吻、口付けである。
しかも、舌も完全に絡めてくるディープな奴だ。
ファーストキス(幼稚園時代)もディープな奴も先無に奪われるなんて、俺は幸せ者なのだろうか?
「……ん、どう?」
「さ、最高です……」
「ふふ、素直で宜しいです。」
思わず本音が漏れてしまった。
本当に嬉しい。
俺はずっと先無とこうしたかった。
だが、だけど、やっぱり………
…ナニカが違う?
「むっ、やっぱり強情だなぁ!脳は、約束は、身体は私を私って認識してるのに心は否定するなんて!」
「それは一体………」
「もう良い!さっさと交わろう!私の純潔を奪ってもらおう!本当にアイツがあの時奪われなくて助かったわ!」
アイツ?自分の事なのにアイツなのか?
ていうか、奪われなくてって事は、前に奪われかけたのか?
「そんな事はどうでも良いでしょう?さぁ、早く行きましょう?」
悪魔の囁きが俺の頭に響き渡る。
だが、俺の直感がこう告げ続ける。
『このまま着いて行けば破滅が待っている』と、鳴り響くのだ。
「ああ、忌々しい。ほら、早く!」
と、強引に俺の手を引こうとする先無。
だが、その瞬間俺の腕輪が光り始め…
『ふぅ、間に合った様だね。』
「お前は…」
「ちっ、疫病神ね!!!!」
…先無と俺の間にその光が集中し始める。
そして、俺を庇う様に立ちながら、人型へと変形していき…
『助けに来たぞ、劔。』
あの神様の一柱、一花が現れたのだった。
続く
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