●タジ・マハール(00/10/10・南青山・ブルーノート東京)

二度目の来日ということだが、日本での知名度はイマイチなタジ・マハール。でも、映画「ブルース・ブラザーズ」への出演やら、グラミー賞受賞やらでマニア以外にも次第に名前が通るようになってきた。その日は、グラミー賞のアルバムと同じバック・バンド「ファントム・ブルース・バンド」を従えての演奏だったが、いやあ凄かった。


なにかとりたててギミックを使うわけではない。ごくごくオーソドックスなR&Bバンドのバッキングで歌うだけなのだが、その「声」の存在感というか、説得力がただものではない。G・B・Kb・ Ds・ Ts ・Tpの6人のラウドな音の洪水に、その銅鑼どらのごときヴォーカルが完全に拮抗しているのだ。


まったく遠慮というものを知らぬバックのメンバーの「侵略」にも決してひるむことなく、その歌声はあくまでもパワフルであり、ときには露骨に腰をふり、還暦間近のジジイとはとても思えぬワイセツなまでのエネルギーをまきちらし続けたのである。うーむ、こんな歌い手、日本におるか? ちょっとばかし、ブルーが入ってしもうた。ユーヤさんやムッシュじゃとても太刀打ちでけへんわ。


もちろん、「押し」だけではなく、「引き」の乗りの曲もあったが(カリビアン調の曲など)、大半はノリノリのオン・ビートな曲で攻めまくって、最後には我々をエクスタシーの坩堝るつぼにたたき込み、昇天せしめたのである。

まったく、タイヘンな「老人力」を見せつけられてしまった。もう、あきまへんわ。(笑)


〔「むかしのライブ・ルポ」完)

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むかしのライブ・ルポ さとみ・はやお @hayao_satomi

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