あまりにも強すぎるある種の自己愛

 大人になることを拒否し、永遠のイヤイヤ期を生きる、とある女性のお話。

 シリアスな現代もののドラマです。ひとりの女性の内面を、主人公自身の自問や独白のような形でひたすら掘り下げてゆく物語。
 自分というものを持て余し、ひたすら振り回される様子がただ悲しく、そしてそれが読み手にも跳ね返ってくるところがとても読み応えがあります。
 重くて苦い読み味がたまらない作品。

 人格の幼さが露骨に前面に出ており、その点あまり好ましい印象を抱きづらい人物だと思うのですけれど、反面、妙に冷静だったりまたちゃんと大人してる部分もあったりして、この人格のデコボコさ加減の生々しさがとても好きです。
 単に悪かったりダメだったりするだけでない、好悪や清濁を併せ持つ一個の人間としての魅力。

 実際のところ、単に「自己愛」のひとことで括ってしまえるほどシンプルなお話ではないのですけれど(もっと入り組んでいて具体的な内容)、そのあたりは是非とも本編で……というか、きっと人によってどう読むか・どこに注目するかが違ってくるところで、そこが本作の魅力ではないかと思います。