暑さの理由

ドン・ブレイザー

暑さの理由

「暑いなー」


「そうだねー」


「本当に暑いな。常識はずれの暑さだよこれ」


「だよねー」


「なんでこんなに暑いんだろ?」


「知りたい?」


「え、知ってるの?」


「知ってるよー教えてあげようか?」


「じゃあ教えてよ、なんでこんなに暑いのか」


「うん、教えてあげる。夏休みってさー宿題あるよね?」


「……あるけどそれが何か関係があるの?」


「あるよーそれでね、あなたその宿題1日目から手をつけてた?」


「なんで夏休みの宿題の話になるか分からないけど、まあ夏休み1日目から宿題やるような真面目ではないよ、私は」


「そうだよねー私もやらないよ。それでいつから宿題やりはじめた?」


「……考えてみればいつも夏休みが終わるギリギリになってからやってるな。毎年懲りずに」


「そうだよねーでも毎年そうなら、途中で反省して毎日少しずつコツコツと宿題進めよう、とか思わなかったの?」


「……思わなかったわけじゃないよ。でもさ、夏休みって長いからついつい後回しにしちゃってさ。だって一月以上あるわけじゃん、夏休みって。夏休みの始まったばかりの頃なんて、時間が無限にあるように錯覚するぐらいだし。まあ、それで夏休み終盤で泣きを見る羽目になるんだけどね……」


「まーそんなもんだよね人間なんて……で、結局それが今こんなに暑い理由ってわけ」


「は?何言ってんの?今の会話に暑さの理由が分かる内容なんてあった?」


「あったよー」


「いや、ただ夏休みの宿題の話してただけじゃん」


「わかんないかなー」


「わかんないよ!わかるように説明してよ」


「うーんとねーつまりさー」























「私たちが今住んでいるこの地球が、いずれ膨張した太陽の影響で焼き尽くされて飲み込まれるだろうってことは、もう何十億年前から予想されてたことなんだよ」


「でもその予想がされた数十億年前に対策を講じようとした人はいなかった。だっていくらなんでも、何十億年後のことなんて遥か未来のことすぎて、いちいち考えてられないしね」


「でもそれから何億年経っても人類はなんの対策も考えなかった。まだまだ先のことだとか思ったんでしょ。それに、ほんの200年も経てば自分どころか自分の知り合いも全員死ぬだろうから、数十億年後のことなんてどうでもいいだろうし」


「……そしてついになんの対策もしないまま、今日を迎えてるってわけ。夏休み最終日まで、宿題を手付かずのまま残しているように、ね」


「これが暑さの理由だよーわかった?」



終わり

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