白いイヤホン
海月
白いイヤホン
スミレ(18)♀︎
僕(18)♂︎
先輩(19)♂︎
約20分
__________
スミレ「…私ね、この曲が好きなの。」
僕M「夕焼け空の下、君は片方の白いイヤホンを僕に渡した。」
スミレ「切ない曲だよね。でも、そこがいいんだ。」
僕M「君は、この曲を誰と重ねているの?」
__________
__学校_教室__
スミレ「あ、イツキ!おはよう。」
僕「あ、おはよう」
スミレ「今日は暑いね。ちょっと歩いただけなのに、汗かいちゃった。」
僕「そうだね」
スミレ「あ、イツキ」
僕「ん?」
スミレ「じゃーん!合格しました!」
僕「え?」
スミレ「大学!」
僕「あ、あぁ。おめでとう」
スミレ「これでやっと、先輩と会えるよ」
僕「まだ卒業まで半年はあるよ」
スミレ「半年なんてあっとゆう間だよ!」
僕「そうかな」
スミレ「ところでイツキは?」
僕「え?」
スミレ「大学」
僕「あぁ。僕は一般で受けるから、まだ」
スミレ「そっか」
僕「うん」
スミレ「……あ、ねえ、イツキは今日、部活くる?」
僕「え?なんで?」
スミレ「今日、先輩が顔だしてくれるんだって!
私が大学合格したから、合格祝い!!」
僕「ふーん。」
スミレ「で?イツキは来るの?」
僕「いかない」
スミレ「なんで?!来てよ!」
僕「勉強あるし」
スミレ「んー、そっか…」
僕「まぁ、先輩によろしく言っといて。」
スミレ「う、うん…」
__間__
僕M「僕はスミレが好きだ。ずっと前から。ずっと変わらず。
でも、スミレが好きなのは…
僕はいつまでもこの気持ちを隠して…」
__間__
__放課後_文筆部部室__
スミレ「せーんぱい!」
先輩「スミレちゃん!久しぶり!」
スミレ「はい!お久しぶりです!」
先輩「ふふ、相変わらず元気そうだね」
スミレ「今日は先輩がいるのでいつもの100倍元気です!」
先輩「あはは、それはよかった」
スミレ「先輩、見てください!」
先輩「ん?」
スミレ「大学合格しました!来年からは先輩と同じ大学です!」
先輩「おめでとう!」
スミレ「ありがとうございます」
先輩「俺からも、合格祝いに…何が欲しい?」
スミレ「んん、先輩のイヤホン」
先輩「え?」
スミレ「先輩の使ってる白いイヤホンください」
先輩「え?そんなんでいいの?」
スミレ「はい!」
先輩「そんなお古じゃなくて、新しいの買ってあげるよ」
スミレ「いえ!それがいいんです!」
先輩「んん…わかった。はい、これ」
スミレ「わぁ、ありがとうございます!」
先輩「どういたしまして」
スミレ「先輩、大学ってどんな感じですか?」
先輩「え?」
スミレ「楽しいですか?」
先輩「うん、楽しいよ。高校みたいに毎回同じ人と授業受ける訳じゃないから、友達も沢山できるし」
スミレ「…か、彼女とかは…」
先輩「え?…あはは、いないよ。俺はモテないからね」
スミレ「そんなことないですよ!先輩にはいい所いっぱいあります!」
先輩「ありがとうね」
スミレ「……」
先輩「ところで、スミレちゃんはどうなの?彼氏とか出来た?」
スミレ「え!?出来ないですよ!」
先輩「そっかあ、スミレちゃん可愛いのにね」
スミレ「え…?」
先輩「イツキ君とかは?」
スミレ「え?あぁ、元気ですよ」
先輩「ふふ、そうじゃなくて、彼氏候補」
スミレ「?!ないないない!ないですよ!」
先輩「そっかぁ、イツキ君も可哀想に。全否定されちゃって」
スミレ「……」
先輩「2人仲良いし、お似合いだと思うんだけどな」
スミレ「……私は好きな人いるので」
先輩「そうなの??だれだれ?俺の知らない人?」
スミレ「……。乙女のナイショです」
先輩「ふふ、そっかぁ、そりゃ仕方ない」
__間__
スミレM「私は先輩が好き。先輩に振り向いてもらうために、かわいい服買って、シャンプー変えて、香水つけて。でもダメだった。
私の恋は、甘いのに、トゲトゲしてて、まるで、金平糖みたい。」
__間__
スミレ「あ、昨日ね、先輩がイツキの詩褒めてたよ!」
僕「え?」
スミレ「ほら、引退前に部活で出したでしょ?コンクール」
僕「あぁ。」
スミレ「それで、褒めてた。」
僕「別に大したものじゃ…。適当に書いたし」
スミレ「そんなことないよ!私も好きだよ!」
僕「え?」
スミレ「特に、『1番幸せな事は君と出逢えたこと。』って所!
幸せってなんだろなって考えることあるけどさ、やっぱり、その人と出逢ってなかったら、その幸せな瞬間も起こらないもんね!」
僕「…ありがとう」
スミレ「うん!」
僕M「僕は、片思いでも、後悔なんてしてない。
だって、僕が1番幸せだったことは、君と出逢えたことだから。」
__間__
スミレ「イツキ!一緒に帰ろ!」
僕「え?うん」
_帰り道_
スミレ「今日も疲れたぁ」
僕「そうだね」
スミレ「イツキ、今日の数学のテスト出来た?」
僕「うーん、まぁまぁかな」
スミレ「えぇ、私全然解けなかった…赤点じゃないといいけど…」
僕「ふっ、留年したら先輩と同じ大学行けないよ?」
スミレ「それは、困る!」
僕「じゃあ、勉強頑張んないとね」
スミレ「はぁ、そうだねー。」
_間_
僕「……」
スミレ「……」
僕「…ねぇ、スミレ」
スミレ「なに?」
僕「スミレはさ、先輩の事好きなの?」
スミレ「え?!えっと……その…」
僕「バレバレだからね?文筆部の後輩もみんな知ってる」
スミレ「えぇ!!」
僕「見てれば誰でもわかる」
スミレ「そっかぁ…恥ずかしいな」
僕「……」
スミレ「皆には内緒だよ!」
僕「ねぇ、……先輩のどこがいいの?」
スミレ「え?」
僕「……」
スミレ「んーとね、優しい所かな。
私ね、入学式の時、お腹痛くなっちゃって、1人で動けなくなっちゃって。」
僕「うん」
スミレ「そんな時、先輩が通りかかって、助けてくれたの。一緒に保健室着いてきてくれたんだ」
僕「…」
スミレ「その時に、一目惚れしたの。」
僕「ふーん」
スミレ「…私ね、先輩に告白しようと思って」
僕「え?」
スミレ「来週の水曜日。先輩が部活に来てくれるんだって。1年生の指導役として、先生が呼んだらしい。その時に、告白しようと思って」
僕「そっか…」
スミレ「うん…」
僕「頑張ってね」
スミレ「ありがとう」
僕「またね…」
__長い間__
先輩「あ、スミレちゃん!」
スミレ「…」
先輩「どうしたの?なんかあった?暗い顔して」
スミレ「先輩、部活の後、時間ありますか?」
先輩「え?あ、うん。」
スミレ「じゃあ、昇降口で待ってます。」
先輩「わかった」
__間__
_昇降口_
先輩「スミレちゃんお待たせ」
スミレ「はい…」
先輩「それで、どうしたの?」
スミレ「先輩、これ!」
_手紙を渡す_
先輩「手紙?」
スミレ「読んでください…。」
先輩「…今?」
スミレ「はい」
先輩「わかった」
__手紙を読む__
スミレM「この気持ちをどう抑えたらいいのか分かりません。
だから、抑えるのはやめにしました。
先輩。私、先輩の事が好きです。
入学式で助けてもらったあの日から、ずっと。
でも、先輩は誰にでも優しくて、皆に好かれていて。
先輩を想う日々は、甘いのに、苦くて、もうこの気持ちを抑えるには、心のお皿がいっぱいです。
先輩が私の事好きじゃないのは知っています。
もし、あと1年早く生まれてたならって何度も思いました。
先輩。年下じゃダメですか?」
スミレ「……先輩」
先輩「……」
スミレ「私、先輩の事が好きです。」
先輩「………ごめん。」
スミレ「!」
先輩「俺にも、好きな人がいるんだ…」
スミレ「……」
先輩「だから…スミレちゃんとは付き合えない」
スミレ「あはは、そうですよね。何となく、分かってました!」
先輩「…ごめん」
スミレ「大丈夫です。先輩に私の気持ちを知って貰えただけで、嬉しいですから」
先輩「…ごめん」
スミレ「いえいえ、また、今まで通り、先輩後輩として、仲良くしてください!」
先輩「…」
スミレ「じゃあ、また(涙を堪える)」
先輩「……」
__間__
スミレ「(泣く)」
__校門__
僕「……スミレ」
スミレ「イツキ…?」
僕「帰ろ。」
スミレ「……うん」
僕「…」
スミレ「…」
僕「…」
スミレ「待っててくれたの?」
僕「うん」
スミレ「ありがとう。」
僕「…」
スミレ「振られちゃった。」
僕「そっか」
スミレ「先輩にも好きな人いるんだって」
僕「…そっか」
スミレ「…うん」
僕「……寄り道してくか」
スミレ「え?」
僕「河原の橋の下」
スミレ「…うん」
__間__
__橋の下__
スミレ「…私ね、この曲が好きなの。」
僕M「夕焼け空の下、君は片方の白いイヤホンを僕に渡した。」
スミレ「切ない曲だよね……でも、そこが良いんだ。」
僕M「君は、この曲を誰と重ねているの?」
スミレ「私、幸せだったよ。先輩と出逢えたから。
あ……曲、終わっちゃったね……終わっちゃった……」
僕M「僕は片思いでも幸せだと思ってた。だって、スミレと出逢えたから。でも、やっぱり、それだけじゃ……」
スミレ「……そろそろ帰ろっか。また明日ね……」
僕M「スミレはあの白いイヤホンで両耳を塞ぐ」
僕「スミレ……」
スミレ「……(音楽を聴いていて気付かない)」
僕「スミレ!」
スミレ「……(気付かない)」
僕「スミレ!!!」
スミレ「イツキ……呼んだ?」
僕M「夕焼け空の下」
僕「スミレ、僕は君のことが……。」
僕M「スミレの耳から白いイヤホンが離れた。」
白いイヤホン 海月 @harusame_hau
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