ステンドグラスの犬と蛙 🌄

上月くるを

ステンドグラスの犬と蛙 🌄




 晩夏の午前4時過ぎ、東山の向こう側に太陽がスタンバイすると、空一面の見事な朝やけで、広い平野のど真ん中の住宅街、とある洋風家屋も白々と明け初めました。


 煉瓦づくりの暖炉の煙突がつき出す三角屋根の入口に、小さな門扉があり、住人の趣味なのでしょう、小さな犬と蛙の絵模様のステンドグラスが嵌めこまれています。


 蕗の葉っぱみたいに大きな1枚の葉を挟んで向き合い、仲よく微笑み合う構図で、いつぞや通りかかったら、グレーヘアの夫人がタオルで丹念に拭いておられました。




      🐶🐸




 その犬と蛙が、夜中は会話をしているの……と言っても、うそだ~という声は聞こえませんよね。まあ、このヘンなオバサンとしては、いつものことですから。(笑)


 実際にそうなんですよ「ぼくたち、どんな因果でこういうことになったワン?」「ほんとふしぎ。でも、あたし幸せでケロ」夜空の星が見守ってくれています。🌠




      🚲🌞




 決して30センチ以上は近寄れない運命の犬と蛙が、ひと晩中ひそひそ話し疲れるころ、耳の長い犬と目玉の大きい蛙は、あざやかなターコイズブルーに染まります。


 そう、朝やけが始まる前のほんの一瞬だけ、空を火星の夕やけみたいに澄んだ青、山や街を茜色に染めるのは、宇宙を司る神さまのやさしいイタワリなのね。(^_-)-☆


 暗いうちに働き始める新聞配達のオジサンやオバサンはその峻厳なる事実を知っているはずなのに、だれもなにも言わないのは、瞬間的に記憶装置が休止するからで。


 ええ、そうです、30センチの宿命を負う犬&蛙への神さまのご配意なんですね。

 この地球の片隅で小さな不思議がいくつか起こっているなんて、ステキ!! ✨



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ステンドグラスの犬と蛙 🌄 上月くるを @kurutan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ