第16歩 楽しいが生き方

「やります」


「……そうか。ありがとう日雀君」


「でも、その前に、1つだけ気になることがあります」


「なんだ?」


 少し緊張していそうな顔をした青咲さんに、1番の疑問を投げかけようと思う。


「なぜ、ぼくだったんですか?」


「何がだ」


「検証の相手です」


「わた……いや、何だろうな。日雀君が選ばれたからだな。前にも言ったが、君ほどこの仕事に向いている引きこもりはいない。だから、本部が君を推薦した。そして、まんまと」


「青咲さんの相棒に」


「そういうことだ」


 本部……。


「いつも、適当な感じでやっていたから、本部推薦と言われると、責任を感じますね。本部のお仕事だとは思いもしなかったから」


「うーん。気楽にやってくれて構わない、と思う。今まで通りで大丈夫だ」


「青咲さんがそう言うなら、そうしますけど」


「俺も、気楽でいいと思う!本部の人たち、みんな頼りになるし、怖くないし」


 いや、なんか青咲さんの顔がNOって言ってるよ。……本部でも怒られてるのかな、青咲さん。


「まあ、なんだ。これからもよろしく頼むよ日雀君、いぶき君」


「「はい!」」


「じゃあ、早速、次の検証だ。この前日雀君が言っていた冷え性改善の検証をやろう。ちなみに、いぶき君は冷え性か?」


「いえ」


「……どうする日雀君。君しか検証人がいない」







 ピンポーン。


 と、いうことで、お隣さんの———


「あれっ、風吹くんと……青咲さんに、お友達?」


「検証仲間です。いぶきです」


「ども」


「こんにちは。どうしたの?……あっ、また検証かな?」


「はい。ちなみに、柄長さんは冷え性?」


 ガチャッ。


「2人とも冷え性ー」


「柚葉さん!」


「楽しそうだから、私も混ぜて」


「……ということで、青咲さん。冷え性検証人増えました」


「よし。じゃあ、まずは」


 サウナー、温泉ー、滝行ー、ってみんな適当に検証内容を言い合って、なぜか温泉に行くことになった。考えようとして、でも実感がなくて、考えられずに答えを出して、結果楽しそうだから、まあ、これがぼくの生きたい方向なんだろう。


「良いパートナーがたくさんできた」


 そう言った青咲さんも楽しそうだった。

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自堕落さんのお手伝い 尾長律季 @ritsukinosubako

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