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くるっと方向転換

片付けをした。
久しぶりの片付け。
開けていない引き出しを全てひっくり返し、そのほとんどの思い出と、さよならをする。
金曜日、ついにその時がきた。
朝、珍しく早起きをし、誰にも知られずたくさんの袋を外に運ぶ。
きっと、外に出るのが久しぶりな思い出もあったろう。
頭には、よく歌ったアニソン。
何度も何度もリピートされ、心が苦しい。
これで最後。
全ての袋を手放しの場所に置いた。
少し距離を取り、振り返る。
ありがとう。
心の中でそう思い、ベッドに帰る。
部屋に着き、ベッドに腰掛け、横になる。
なんとなく、言わなければと思った。
「ありがとう」
そう言ってみて、初めて、過去とさよならした気がした。
過去に縛られ、身動きが取れなかった。
思い出たちのせいじゃない。
自分が執着していた、それだけだ。
今、を生きるため、過去を手放した。
感謝の言葉は、私に帰り、心が軽くなってきた。
じんわりだから、自分じゃ今の重さがわからない。
ただ、一緒にいてくれてありがとう。
それがすべて。
くるっと、今までの方向に背中を向け、方向転換をした。
おそらく、15年前に向いていたであろう方向。
今とはまるで違う自分である。
変え方を少し、ほんの少しだけ思い出した気がする。
あの頃に戻り、時を進めるだろうか。
いや、進めなくては。
そうでなければ、私は私ではなくなってしまう。
大袈裟に聞こえるだろうか。
まあ、書き物ってそんなもん。

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