先輩のこと②

✴︎前回の①とは違う「先輩」のお話✴︎


今年のカクヨム甲子園が始まって数日経った頃、私は人生で初めてXのスペースを開いた。

理由は特にない。

ただ、カク甲が始まり興奮していたのは事実。

普段の私なら絶対にやらないだろう(まず誰が聴くというのか)。


前日に「明日スペースやるかも」とだけポストし、当日は塾から帰宅し風呂で身を清めてからスペースを開始した。


スペース序盤、私はしていた。なんかよくわからないことを口走りながら、でもカクヨム甲子園のことばかり話していた。


開始からしばらく経ったとき、スピーカーリクエストが来た。

(リクエストを受け取ると、相手にスピーカーの権限が渡され、電話みたいに通話できる)

正直びっくりした。しかもリクエスト主は、カクヨム甲子園の先輩だった。

もっと言えば、二年前の大賞受賞者の方だった。


もちろんFFの方である。

たまたまXを開いたら私のスペースの帯が見えたのだろう。入ってきてくれていたらしい。


相手が私なんかでいいのだろうかと思いつつ、リクエストを承諾した。


「こんにちは〜。なんかカクヨム甲子園のこと語ってるなと思って……」


聞こえてきたのは優しい男の人の声だった。過去にその先輩のスペースにリスナーとして入ったことがあったので、声は知っていたけれど、それが自分だけに向けられているとなると話が違う。


一気に体温が上がったのがわかった。緊張で口から心臓が出そうだった。


けれど大きな救いだったのは、その先輩がめちゃコミュ力高い上に超優しかったこと。

お互い好きなカクヨム甲子園の作品について語った。去年の受賞作はホラーが多かったとか(先輩はホラーが大賞獲るのを待っていた、と喜んでいた)少し前は童話っぽいのも多かったですね、今年こそラノベ系受賞しないかな?等々。

お互いオタクだったのである。

(けれどコンテストの熟知度は先輩の方が上だった)

先輩の創作に対する考えなども、少しだけ聞くことができて嬉しかった。


その先輩の受賞作は、たった4000字のなかに緻密なトリックを散りばめ、読者をズルズルと引き込み、最後には……となる、仕掛け盛りだくさんの「恋愛」小説だ。

作品を読んだ時から薄々感じていたが、先輩はかなり頭がいいのだと思う。言葉の選び方でわかる。そして何より、優しかった(大切なことなので2回言う)。私が意味わからんこと口にしても、温かく受け止めてくれた。

二歳しか違わないが、ああ大人だ、と思った。


気づけば、通話を始めてから1時間以上経っていた。

23時頃、一区切りついたので「じゃあこれで」と私たちはお別れした。


1時間も話した気がしなかった。けれど手に握っていたお茶のペットボトルは空になっていて、エアコンの効いている部屋で私の顔は火照っていた。


だいぶ熱く語ってしまった。大丈夫か、引かれてないか。私、話が弾むと早口になっちゃう癖あるからな……


ネット上の人とこうやって声でやり取りをしたのは初めてで、不思議な感覚だった。

嬉しかったのは、初対面の人とも(多分)ちゃんと話せた!ということ。

これも先輩の人柄ゆえだろう。

私はネットでも現実でもめちゃくちゃ人見知りなのだ。


自分一人のスペースはしばらくごめんだが、

(あまりに喋り下手すぎて聴いている人に申し訳ない)

他の人となら、またこうやってスペースやってみたいな……と思う。


翌日「めちゃくちゃ楽しかった」と先輩から返信があり、心底ほっとした。

マジで優しい人でよかったです。


………


とても楽しい経験だったので記録として残してみました。


③もあります。次で最後です。

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ミカヅキ 暁 葉留 @uretan

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