先輩のこと①
私には憧れの先輩がいる。
忘れもしない、高校一年生の秋。期末テストの三日前。テスト勉強から逃げ、スマホを手に取った私は、本当に何気なくその作品をタップした。
その作品の作者である、「先輩」の存在は少し前から知っていた。他の作品でフォローしていて、その作品の印象が強烈だったからだ。
先輩は自分の作品をこう呼んでいた。
「ポリコメ」……ポリティカルコメディだと。
それはどうでもよくて、先輩の書く文章が好きだった私は、作者繋がりでその作品にたどり着いた。
結論から言うと,その日私が勉強を再開することはなかった。
ペンを持てなかった。スマホを手放せなかった。
画面にかじりついたまま、その作品を何往復もした(多分PVめちゃ増やしてしまった)
全てがドンピシャだったのだ。
私の好みに。それだけじゃない、その作品は「完璧」だった。
頭の中に絵が浮かぶ、細かい情景描写。色の表現、言葉遣い一つとっても繊細で美しくて、私は息を止めて魅入っていた。ストーリー展開も一切無駄がない。20000字の中にぴたっと収められた、夢。
そして、後に知る。
その作品は、高校生限定小説コンテスト「カクヨム甲子園」のロングストーリー部門の大賞作品だった。
これが私とカク甲の出会いである(……と言えたら文章的に収まりがよかったけれど、カク甲に関しては小学校の時から知ってたよ)
その夢に魅せられて、去年の夏はカク甲とともに走り抜けた。
本当は二作出す予定だったが、部活で思ったより体力と時間を消耗してしまい、一作に絞らねばならなくなった。
その決断をしたのが〆切の一週間前。
ようやく一作にしぼり、全力で仕上げて提出。
推敲がまともにできていないせいで、散々な文章が散々なまま世に放たれた。
正直、終わった、と思っていた。
夏に死にきれなかった虫のように9月を過ごし、10月に入って自分の作品が「中間選考」を通過してたことを知った。
ちなみに去年のカク甲、中間選考の倍率は10倍である。
上位10%だったってこと。
なんで通った??
理由は今でもわからない。マジで謎。薄々察しがついていないこともないが、でもやっぱ謎。
12月、最終選考とともに受賞作品が発表された。
もちろんそこに自分の名前はない。知ってはいたけど、素直に悔しかった。
その思いを長文で近況ノートに綴ってしまうのが私という人間だ。
冬が明け、春が来たある日に私は思う。
「やっぱあの近況ノート消そ。負けた奴がポエミーに愚痴ってるの相当痛いぞ」
私は近況ノートのページを開き、そして二度見した。
なんとその「先輩」が、ポエミー近況ノートにいいね👍をつけてくれていたのだ!
なぜ!?先輩は私をフォローしていないから通知はいってないはずなのに……
……まあ実はこの理由も察しがついていて、この一週間前くらいに私は先輩の作品に長文コメを送りつけていた、という履歴がある。
「初めて〇〇さんの作品を読んだ時から、ずっとファンです。」
あまりにキモい。こいつは生かしておけねぇ、と今なら思う。
多分先輩はそれをみて、あまりのキモさに私のプロフィール欄を覗き、その未練たらたらノートを目にしたのだろう。
ちなみにキモコメントのおかげか、先輩とはXアカウントでも繋がることができた。
フォロー通知が来た時は「お゛!?」と叫んだ。はちゃめちゃに嬉しかったです。
そして結局、私がその近況ノートを削除することはなかった。
先輩は今大学生で、今でも一応小説は書いているらしい(私は先輩をフォローしているので作品の更新通知が来る)。滅多にXに浮上しないので近況は知れないが、何かしらの形でずっと書き続けていてほしい、と思う。
………
長ぇ。最後まで読んでくれてありがとうございます。
もしかしたら②もあるかもしれません。
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