余
出産はこれで終わり——ではない。
この後、パートナーと生まれた赤ちゃんは控室に戻っていき、私は一人処置を受ける。
「いっったぁぁぁああい!!」
前代未聞の声が出た。
「お母さん、産むより騒いでどうするんです」
それは子宮の中に手を突っ込まれ、残された胎盤と血液を外へ掻き出す作業だった。
は、は、吐きそう……
そして苦痛は続く。
「は、はははっ、痛い」
「あと四針程度で済みますから、我慢して」
「あー……」
針がザクザク、糸が皮膚を突っ張るたび、裂かれた子宮口を縫われる痛みにお尻を浮かせた。
「はい、終了ですよ。立てますか?」
「た、立てません」
「じゃあ担架で行きましょう」
先生の指示のもと、ふっくら助産師が担架を運んでくる。
「移れる?」
「はい……」
そう返事をして。私は分娩台から、担架へと身を移した。
私のその行動に、分娩室の空気が変わる。
「ちょ、え?」
「え?」
「いや、いやいや、え? ママ、何でその格好?」
「なんか……変ですか?」
「いや、楽ならいいんだけど。じゃあ、行きますか」
助産師や先生がクスクスと笑いを抑えきれない中。私は担架に乗って分娩室を後にする。
「なんかあれだね、波乗りしてるみたいだね。普通、寝っ転がっていくんだけどね」
そう言われて、やっと状況を理解した私は
顔を真っ赤に染めながら担架の両端をがっしり掴んで
綺麗に正座の状態のまま、控室へと運ばれていったのでした。
産む。 千鶴 @fachizuru
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