新婚編~アリシアside2~

新婚編〜アリシアside〜2

その日、アリシアの疲れとストレスは頂点に達していた。

いつも通りベッドに入ったはずなのに、なぜか寝付けない。

疲れ切った頭は回転を止め、いつもなら絶対に試合ようなことをし始めてしまった。

まず手始めに、夫婦の寝室からルーカスの部屋に侵入すると、彼の夜着を持ち出した。

そうしていそいそとベッドに持ち込むと、抱きしめて掛布を頭から被った。

普段なら羞恥心が勝って絶対にしないような行動だ。

だが、その日はどうしても、ほんの少しでも彼の移り香だけでも感じたかったのだ。


だがやはり寝付けない。

さてどうしたものか。

時計の針は天辺を越え、一刻、また一刻と着実に針を進める。

もう今日は諦めよう。そう決めて、ルーカスの帰りを待つことにした。

続きの間に行き、明かりをつけて机に向かったものの、突っ伏してしまう。完全に寝そけてしまった状態のアリシアは、どんどん頭痛がひどくなってきてしまったのだ。

だが、彼女の予想よりも早く扉が開く音がした。


足音と共に、何やら声も聞こえるような気がするが、今は早く眠りたい。

声の主の袖口を引っ張ると、ぐいぐい引っ張ってベッドに倒れ込むように入った。

よく知った体温と香りに一気に安心すると共に遠ざかってしまっていたはずの眠気が押し寄せてくる。

隣にいる彼が離れてしまわないようにぎゅうっと抱きしめると、そのまま睡魔に委ねて意識を手放した。



翌朝、そろって寝過ごした二人だった。

そして、掛布の中からルーカスの夜着が本人に見つかって、甘く優しく、でも着実に蕩かされて白状させられるのはまた別のお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【本編完結】悲劇のヒロインぶっているみたいですけれど、よく周りをご覧になって? 珊瑚 @sango0852

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ