新婚編~アリシア編~

新婚編〜アリシアside〜

アリシアは寂しかった。


プロポーズからずっと――はたから見れば鬱陶しいほどに――彼女のそばにはルーカスがいた。

もちろん彼女がそれを鬱陶しいだなんて思うはずがなかった。彼のその行動は、元婚約者に裏切られた経験のあるアリシアへの配慮だということは重々理解していたし、それに、単純に好きな人とずっと一緒にいられる、というのは嬉しいことだったから。


でも、最近世代交代のための準備が本格化して来たことによってほとんど彼の顔を見ることが叶わなくなってしまっていた。仕方のないことなのはわかっている。自分だって昼間は国内貴族に限らず、国交のある国外の王族や貴族の関係性や力関係、それぞれの特産など、幼少期から叩き込まれてきた知識の更新と再確認にとどまらず、そのそれぞれと適切な形での関係作りが望まれた。

これは代々王妃・王配の仕事なのだ。現在は王妃が取り仕切っているが、戴冠式の前に、王妃から全ての引き継ぎを終えなくてはならない。

もちろん王太后という立場になってからも助力は惜しまないとは常々言ってはくれるものの、その言葉にいつまでも甘えるわけにもいかないだろう。必要な時には王宮に招き、また急を要する時には自らが相手の元に訪問する。そんなこんなでアリシアは国内外問わず飛び回る日々が続いていた。


それでも、ルーカスだって頑張っているのだから弱音を吐くわけにはいかない。

だが、王宮内の移動中に遠くから眺めた彼の様子が以前目にした時よりも随分とやつれてしまっていたことが嫌に気にかかった。

目の下のクマも、もうずっと消えていないのだろう。

彼は、夜アリシアがベッドに入ってしばらくしてから帰ってくることが多かった。

眠っている自分の頬や額に触れるだけのキスを落として隣で眠るだけ。


起こさないように気を遣っているのはもちろんわかるのだ。

でも、思いを交わしてからこんなにも彼を遠くに感じたのは初めてだった。

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