SUNじゃなくてもいいですか?

TiLA

SUNじゃなくてもいいですか?

「サンタクロースっているんでしょうか?」


「いるかいないかと聞かれると少し難しいけれど、サンタが存在するかしないかと言われれば存在するね」


「どういうことですか?」


「例えば心は目に見えないよね?」


「はい」


「心は手で触ることも重さを測ったり、長さを測ることもできない」


「そうですね」


「だけど心は存在する」


「確かに。それを証明したのが『我思う故に我在り』ですものね」


「そう。心がなかったらそもそもサンタがいるかどうか悩んだりもしない」


「サンタも同じように見えないけど存在するということでしょうか?」


「少なくとも我々はその見えないものに『心』という名詞をつけ、同じように『サンタクロース』にも名詞をつけているよね」


「なるほど。物理的に質量があるものだけを存在すると定義すると解釈は変わるけど、問題の前提として、存在をどう定義するか? ということですね」


「少なくともサンタと聞けば、大概の人は赤い服を着た白いひげのプレゼントをくれる人を思い浮かべるけど、わたしの名前を聞いてもわたしの顔や背格好は誰も思い浮かばないよね」


「それだけでも大衆の中で偶像化されたサンタという存在があると言えます!」


「クリスマスに及ぼす経済効果はわたしが人生を何度繰り返しても追いつかないよ」


「サンタの砂糖菓子をのせるだけでケーキが飛ぶように売れますものね」


「ちなみに、昔とある少女が同じような疑問をもったことがあってね」


「聞いたことがあります。絵本とかにもなってますよね」


「家族に相談したら『SUN(当時その家が取っていた新聞)に聞いてごらん』と言われたらしい」


「それでSUNの記者が書いたその投書の返事が今でも語り草になっているわけですよね」


「イエス! バーバラ!」


「わっ! びっくりした!」


「その少女の名前がバーバラといって、記者が少女に向けた『サンタがいるのかですって? イエス! バーバラ! サンタはいます!』の部分が特に有名なのさ。だから、イエス! というと、そのフレーズが続くらしい」


「あ~、日本だと『イエス! 高〇クリニック!』のやつですね」


「あ~ね」


 ――― カランコロン ―――


「ところで最近、暗いニュースが多いですね」


「そうだね世の中どこを向いても嫌なニュースばかりで嫌になるよ」


「ニュースといえばやっぱりNorth、East、West、Southの頭文字を取ってNEWSになったんでしょうか?」


「いやあれは都市伝説みたいなもので、実際は違うそうだよ」


「え⁉ そうなんですか?」


「実際NEWSの語源はNEW (新しい)の複数形で”あたらしいこと”という意味からきているらしい」


「う~ん、でも、それって少しおかしくないですかぁ?」


「なにが?」


「だってニュースって大体、過去に起こったことを流しているわけじゃないですか。だったらNEWSじゃなくてPAST (過去)のほうが正しいと思うんですよ」


「ま~、最近はネットとかでニュースより先に情報が手に入るから、テレビやラジオのニュースを聞くときは情報が陳腐化していることはあるよね」


「そうです! 断固として強く抗議します!」


「そんなこと言ったら『新聞』なんて次の日の朝にならないとこないんだから、ちっとも新しくないよ」


「新聞にもいっちょ前に新 (New)なんてつけてますものね。あぁっ!」


「わっ! なんだい急に大声出して」


「おかしいですよ! 新聞は読むものなのになんで新しいことを聞くと書いて新聞なんですか⁉」


「それは新しく聞いた話、というところからきているらしいよ」


「え~っ、でも絶対おかしいですよ! 今日日、『新見』か『新読』に置き換えるべきですよ!」


「ま~、今日日、インタビューだけが取材方法じゃないだろうしね」


「いやそもそも伝えるときに文字で読ませているわけですから。う~ん、こんな疑問って、どこに相談したらいいんでしょうか?」


「新聞に聞いてごらん」

 

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