第8話 恋するふたり
あまねと拓馬は公園の炎天下の中、ベンチに腰掛けていた。
「あたし、こうして男の子とデートするのはじめて」
あまねは少し緊張気味の声で言った。
「ヘェ~、何か意外。あまねってかわいいから異性とデートしたことあると思ってた。俺も女子とデートするのはじめてやで」
拓馬も緊張気味の声で言った。
あまねと拓馬の間には少し物理的な距離があったが、何も言わなくても、「好きだ」とか、言わなくても、二人の気持ちは繋がっているに違いないと拓馬は確信していた。
ふと二人を夏の温かい風が包み込んだ。
「あたし実はね、前の学校ではひとりも友達がいなかったの」
あまねが悲しい顔で言った。
「まじで?」
拓馬はなんとなくそういう気がしていたが、そう言った。あまねの個性的すぎる性格がそのような人間関係を生んでいたのかもしれないなと思っていた。
「うん。まじ。それでね、この堺の学校に転校してきたの。前の学校ではいじめにあってたの。あたし性格悪いでしょ?それで変に目立ったちゃって…。それで体調崩しちゃって病院に行ってたりしてたの…」
「そうなんや。そんな過去があってんな。でも俺、あまねの性格好きやで。一緒にいて楽しいし」
「そう思ってくれたらあたしとしてもうれしいけど…。でも今までみんなそうだったんだよ。最初は仲良くできるけど、だんだん仲間はずれにされていくの。あたしは人と深い関係になれないの」
「別に深い関係にならなくてもいいんじゃない?」
「あたしは深い関係になりたいの。あたしをありのまま受け入れてくれる人がほしいの」
あまねは真剣で深刻な顔をしている。
「なんじゃそら」
拓馬は軽く笑った。
「笑わないでっ。こっちは真剣なんだから」
あまねは怒った。
「ここに受け入れてやる男がおるやろ?」
拓馬は両手を広げた。
「もうっ!拓馬はバカなんだからっ!」
あまねは拓馬に胸に飛び込んだ。
「あまね、俺ら付き合か?」
拓馬は言った。
「うん!付き合う!当たり前でしょ!」
あまねは拓馬と抱き合ったまま、拓馬の耳元で微笑んで言った。
二人はその後学校へ行った。
二人が教室に入ると授業中だった。
「こらっ、どこいっとったんや?」
数学教師が怒った。
「ちょっとデートしてました」
拓馬が言った。
「蒼井、女子を巻き込んで何しとんやっ」
「先生違うんです!あたしがついていきたいって言ったんです!」
あまねが言った。
教室中の生徒たちが「ひゅ~」と二人をはやし立てた。
あまねがそう言うと、数学教師も「そうか」となぜが納得した。
そして二人は授業に参加した。
ちやふるガール 久石あまね @amane11
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