第20話:【イシェリカと飲酒】
帰宅後、イシェリカを伴い庭に行く。
「広さはこれ位だけど大丈夫?」
『この広さがあれば大丈夫です』
「明日から使ってもらって良いから、もし、仕事前に鍛錬するなら終わったらシャワーを浴びておいておくように。衛生面にも気を付けてくれよ」
『準備は手伝わなくて良いのですか?』
申し訳なさそうに彼女が聞いてくる。
「あぁ、掃除も済んでるから、朝はスープを作ったり下拵えするだけだから大丈夫だよ。今日と同じくらいに朝食にするから遅れ無いようにしてくれたら良いよ」
『分かりました、では、明日からここを使わせて頂きます』
それぞれに荷物を抱え家に入る為に玄関に向かい扉を開けるとリビングの入口傍から『れを』がイシェリカを遠巻きに眺めている。その距離感は昨日より縮まっている様に思えた。
◇ ◇ ◇
彼女に風呂の掃除を頼み、俺は店用の食材を店舗に運び片付けていく。
昼間、咲華の食べていたオムライスに興味を持っていた様なので今日の夕飯はオムライスにしてみた。イシェリカには店で出しているナイフを入れるとふわふわの卵が広がるものを、俺は薄焼きにした卵で包むものを。ケチャップはお好みでかけてもらう。サラダとオニオンスープを添える。
料理が出来上がる少し前に風呂場から戻ったイシェリカがテーブルの上を拭き、出来上がった料理を運ぶ。
「興味がありそうだったから今日の夕飯はオムライス。後、オニオンスープとサラダな、和風ドレッシングで良いか?」
『はい、有難うございます。和風ドレッシングで良いです』
「イシェリカさんはお酒は飲める?」
俺は缶ビールを片手に確認を取る。
『はい、飲めます』
「そうか、じゃぁこっちの酒も試してみるか?」
ビアグラスを二つ取り出し席に着く。
『いただきます』
缶ビールを開けグラスに注ぐ、イシェリカのグラスにはまず一口分注ぐ。
「苦味があるから一口飲んでみて、大丈夫なようなら注ぐよ」
彼女はビールを一口含み味わう。
『このくらいの苦味は大丈夫です。私の暮らしていた所のエールに似ているようですがこちらの方が雑味も無くすっきりとした印象を感じます』
「ビールは喉越しを楽しむ人もいるお酒だよ」
彼女のグラスにビールを注ぎ、俺は自分のビールを半分ほど飲む。
「オムライスにはお好みでケチャップをかけると良いよ」
そう声をかけながら自分の分にケチャップをかける。彼女はケチャップをかけずに一口食べ、もう一口はかけて食べ比べる。
『けちゃっぷというソースをかけた方が美味しいですね』
そう言って残りのオムライスにケチャップをかけ美味しそうに食べる。
食事を終え彼女に洗い物と湯張りをたのみ俺は二階へと上がる。趣味部屋の奥に片付けていたウォータードリッパーを取り出しリビングへと戻る。洗って片付けていた物だが使用前に改めて洗う。
『お店にあった物より小さいですけど、これも水出しコーヒーを作る器具ですか?』
各部を洗い、拭き上げが終わった物を組み立ていると彼女が聞いてくる。
「趣味で淹れてた時の、今は店のが有るから片付けてて。水出しコーヒーが気に入ったみたいだから、もし自分でやってみる気があるなら淹れ方は教えるよ」
『はい、やってみたいです』
「なら、足り無い物をちょっと店から取ってくるよ」
豆を挽きウォーターサーバーから必要な分の水を容器に移してリビングに戻る。ウォータードリッパーはカウンターの壁際に設置、挽いた豆を入れ湿らせた後フィルターを乗せ上部の給水容器に水を入れたところで湯張りが完了した事を知らせる電子音が聞こえてきた。
『お湯を止めてきます』
「あぁ、お願い」
戻って来た彼女に説明の続きをする。
「滴下速度によっても風味が変わってくるから色々試してみると良いよ。ここのコックを操作して滴下量を調整して。最初は一秒から二秒の間に一滴落ちる様に調整してみて」
『はい、やってみます』
真剣な表情でコックを操作し抽出を行う。
最初は上手く操作出来ずにいたが徐々にちょうど良い滴下量に調整する事が出来た。
「うん、その位の滴下で良いよ。暫くはこのままで良いから、先に風呂に入っておいで」
彼女を風呂へ送り出す。
俺は彼女が風呂に入っている間にドライヤーの説明書に目を通し、スマホの動画サイトで正しいドライヤーのかけ方を確認しておく。俺も普段使わないから確認は必要だろう。
彼女が風呂から上がったのでドライヤーの使い方を説明し、俺も風呂に入ることにする。
風呂から上がった頃にドライヤーの音が止まる。あの髪の長さだと時間もかかるわなぁ…女性のヘアケアって俺が思っていたより大変でした。
その後は一時間ほど日本語の勉強をして寝る事にした。
====================================
次は12:00更新です。
僕と彼女の別れる理由【短編】
https://kakuyomu.jp/works/16817139556464269199/episodes/16817139556465980184
NTRれた彼女が僕に未練があるはずがない【短編】
https://kakuyomu.jp/works/16817139556510579725/episodes/16817139556510600289
読んで頂ければ幸いです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます