NTRれた彼女が僕に未練があるはずがない。【短編集】
鷺島 馨
NTRれた彼女が僕に未練があるはずがない【短編】
彼女が知らない男とキスをしていた。
小説やドラマだと主人公の男性と付き合っていた彼女が肉体関係に不満があって他の男に惹かれていく。
それで主人公にバレたけど『本当はあなたの事が好き』なんて言って、間男との関係を終わらせて主人公の元に戻ってハッピーエンドなんてものがある。
また、間男の元に行ったのに主人公に新しい彼女ができたらヨリを戻したくなる元カノ。
そんな元カノが出てくる作品を見るたびに僕はバカじゃないのと思う。
それだけ大事なら、なんで彼氏を裏切るのか。
尻軽なその行動を主人公が受け入れると考えるほど軽薄なら別れるのが正解だろう。主人公の為にも。
それで粘着質に付き纏う。その姿は醜悪以外の何者でもないだろう。
でも、現実世界でそんな事があるハズがない。
これまで僕は何度か彼女を寝取られた。
イケメンというほど顔がいいわけじゃない。
身長は176cm、高いと言われる程でもない。
筋肉はそこそこについているけどマッチョではない。
成績は上の下。
仕事は中堅どころ。
どこかずば抜けていいところがある訳でもない。
そんな僕が何故か告白される。
彼女がいるときは当然断るけれど、彼女がいなければ受けてみる。
そこから交流を深めて好きになっていく。
その事は交際を受ける時に相手には話している。それがダメなら付き合わない。
相手はそれを受け入れた上で交際を始める。
すぐに彼女の、いや、今まで付き合ってきた彼女達とも関係を深めずに体を重ねる事を僕は良しとしなかった。
同年代の男性と比べて考え方が硬いのだろう。
それでも、それで良いと僕は思っている。
軽薄な女性は嫌いだ。
最初の彼女は高校二年の時に三年の悪評の多い男子に寝取られた。
彼女の家に行った時に男の下で喘いでいた。
僕はその扉を開け、彼女に別れを告げてそれで終わり。
教室で言い訳をしてきたが、僕にはもう彼女への気持ちはない。
その場で『男子の下で喘いでいた時に言った通り、僕と君は別れたんだから、声をかけないでくれ』と告げ、関係を完全に終えた。
その後、彼女がどうなったかは知らない。
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私は後悔していた。
彼氏ができたことで友達からは『当然、もうヤった?』と聞かれることが増えた。
でも奥手な彼は私を抱こうとはして来ない。
最初は私もそれで良いと思っていた。
ある日、三年生の先輩に声をかけられた。友人からも『付き合って、手も出して来ないなんて気持ちが離れたんじゃないの』と言われていたので男性の意見を聞きたくて先輩に相談した。
そのうちにいい雰囲気になり先輩とキスをしてそのまま身体を重ねた。
彼に対して後ろめたい気持ちもあったけれど、その気持ちも身体を重ねていくうちに薄れていった。快感の方が大きくなった。
あの日、彼にその行為を見られた。それもただ見られたのではなく、私が先輩を求め喘いでいる所に彼は踏み込んできた。
そして私に別れを告げた。
頭が真っ白になり先輩を突き飛ばし彼を追いかけたかった。
でも、先輩は私を押さえつけ最後までその行為を行った。
さっきまで感じていた快感はもう感じない。気持ち悪い。早く終わってほしかった。
先輩は反応の無くなった私の身体を抱き続け、それから三回、私の中に出した後『反応がないお前は可愛くないから今日で終わりだ。最後にたっぷり注いでやったからな』とニヤニヤしていた。
私は何の反応も返せなかった。
私の中から彼の出したものが流れ落ちた。
翌日、彼に弁解しようと声をかけた。
彼からの言葉で私がした事がいかに酷いことかを認識させられた。
私のしたことはその日のうちに学校中に知れ渡った。
数日、登校したが周囲の目に耐えられずに私は登校する事を辞めた。
精神状態が不安定になった私は生理が来なくなっていた。
生理不順だと決めていた私に変化があったのは年が明けて、年度が変わった五月のこと
私は先輩の子供を
先輩と連絡を取る事はできなかった。中絶するには育ち過ぎていると言われた。
愛していない人の子供を産まなければいけない……
これは私の犯したことへの本当の意味での罰なのだろうか……
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次の彼女は大学に入ってから、この彼女は付き合って
そんな事を言うのなら僕に求めれば良いだろう。それを言わずに僕のせいにするのはやめて欲しい。
そんな
学内で彼女を見かける事はあった。
視線を感じる事はあったがそれだけ。
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私は彼のことが好きだった。
交際を始めて一週間が過ぎてもキスもしてこない彼。
今まで付き合った人は一週間目にはキスくらいはしていた。
それより長く付き合っていれば当然、身体を重ねることもあった。
一度その気持ちよさを知ってしまうと彼とも感じたいという気持ちが大きくなっていった。
そんな時に知り合った男性、身体を重ねると相性が良かった。
身体が疼いた時にその彼と連絡をとり快楽を求めた。
『これは彼が私に手を出して来ないからいけないの。私は彼のためにこの欲求を抑えないといけないんだから』と自分に言い聞かせながら快楽に身を委ねていた。
彼から『君が浮気をしているところを見たと言う人がいるが、嘘だよね』と聞かれた。
私は彼のために、この欲求を抑えるためにしているのに、そんなことを言うの。
苛立ちが私を包む。
『いつまで経っても貴方から手を出してくれないから』そう言って彼を責めた。
そのまま彼に反論させずに捲し立てた。
最後に彼は『もういい、別れよう』と言って私の前から去って行った。
その憤りが引き冷静になった私はひどく後悔した。
男性とは関係を切った。
私が本当に好きだったのは彼だった。
学内で彼を見かけることはあったけれど感情のない彼の瞳を見ると私のした事がどれだけ酷いかを思い知った。
私は彼の前に姿を見せないようにしよう……
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二年になった時にできた彼女は『僕の静かなところが好き』と入っていたおとなしい子。
奥手な彼女は手を繋ぐのに
そんな彼女は半年を過ぎたあたりで清楚な感じから少しづつ派手になっていった。今思えばこの時には彼女の気持ちは僕にはなかったんだと思う。
しばらくして僕のスマホに彼女から動画が送られてきた。
その内容は複数の男性と交わる彼女の姿。
ご丁寧に日付月で5つのファイル。その全てがそういったもの。
彼女は無理やりされている訳ではなかった。それどころか、彼女から求めていた。僕の心は張り裂けそうになった。
僕を好きだと言った彼女はもういない。
彼女が尋ねてきたが、もう顔を合わすことも嫌だった。
僕は彼女のことを今まで付き合ったどの子より好きだったんだと思う。
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私の好きになった人は物静かで聞き上手。
男性経験のなかった私は彼と手を繋ぐまでに一月以上経っていた。
それでも彼は無理に関係を進めず私を待ってくれる。大好き。
サークルの友達から『もっとお洒落をしよう』と言われて頑張ってみた。
彼も褒めてくれた。嬉しい。
サークルの先輩から告白された。当然、断ったけれど。
それからもしつこく告白された。何度も断っているうちに『先輩に悪いな』という気持ちが出てきた。
『これで最後にするから』と告白の後ご飯に誘われた。
先輩の告白に答えられなくて悪いという気持ちからその誘いを受けた。
気がついた時には先輩に挿入され激しく腰を打ちつけられていた。
彼ともした事がないのに。
怒りが押し寄せてきたけれど先輩の手にはスマホが握られていた。
絶望感が私を襲う。
嫌がる私にニヤけた表情で激しく腰を打ち付け続ける。
『初めてだとは思わなかったよ。バカだろあいつ、何やってんだ。まあ、こっちはラッキーだったけどな』
跳ね除けることもできずに私は、されるがままで、ただただ泣いた。
彼とは相談する事もできずに交際を続けた。
スマホの動画を元に先輩は私を呼び出し関係を迫ってくる。
行為はどんどん過激になっていき、複数人を相手させられる事も増えてきた。
そのうちに私の気持ちとは関係なく、身体が求めるようになっていった。
行為の後、我に返った私は自分が許せなくなる。
ある時、行為の後『よく撮れてるからやるよ』そう言って私のスマホに送られてきた動画は私が犯されているもの。それなのに画面の中の私はいやらしく彼らを求めていた。
自分が信じられず呆然とした。
私の手からスマホが取り上げられ『どうせなら彼氏くんにも送ってやろうぜ』と言ってあの動画が送信されてしまった。
スマホを奪い返し彼に電話をかけたが出てくれない。
彼の部屋を訪ねたけれど会ってくれない。
彼の部屋の前でしばらく泣き続けた。
泣き疲れた私は彼に相談しなかったのがいけなかったんだ。あの時に相談していればこんな事にはならなかった……
彼と顔を合わす事ができずにいるのに、先輩からは今だに動画を理由に私を呼び出してくる。
『もうあの人達とは会いたくない』と私は決意を固め被害届を出しに行った。
幸い、動画が流出する事はなかったが親にも知れ私は大学を辞した……
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僕は就職してから三年間、告白されても誰とも付き合うことは出来なかった。
大好きだったあの子に裏切られた事で交際をする気になれなくなっていたから。
そんな僕にしつこく告白してくる子がいた。
それだけ言うのなら信じて良いのかと考えるようになり、その子と交際を始めた。
交際してから彼女は満足したのか、それまでよりは落ち着いた関係になった。
『一緒にいると落ち着く』その言葉が嬉しかった。
『キスしよ』と彼女から求められた。
キスをしたのは最初の彼女以来…
僕たちは『ゆっくり関係を進めていこう』そう約束をしてキスをした。
その彼女が知らない男と視線の先でキスをしていた。
浮気をした彼女は、いや今までの彼女達も僕に未練があるはずがない、だから僕もこの関係を終わらせるために彼女達の元へ行く。
『僕たち別れよう』と告げるために。
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