第21話:【思いを巡らす】/【閑話・カトラスの受難】

 イシェリカは布団に入り思いを巡らす。


『罪悪感を感じない為の偽善』だと彼は言うが、見ず知らずの者の為に必要な物を色々買い与え、生活のサポートまで行うのはとても大変な事では無いかと思う。何か下心があるのであればそれ相応の対応を取るのだが、彼からはそう言った感じを受ける事が無い。時折、女性の部分を意識しているような視線を感じる事はあるがすぐに視線を逸らせたり話題を変えている事から悪気の無い事が窺えた。


(彼については信用に足る者と考えて良いでしょうか?色々とご面倒をおかけしている様ですが他に頼れるあてもありませんし、少しでもお役にたてる様になりませんと…)


 体内の魔力に意識を向け回復量を確認するが思わしくない。


(昨日と比べても回復量が少ないような気がします)


 この調子では自力で帰還するのにどれほどの期間が必要になるのか分からない、最悪は帰還出来ないかもしれないと思ってしまう。


(焦りを覚えても仕方のない事、滝口さんの負担を減らす事が出来る様に此方の生活に馴染む事を優先しなければいけませんねぇ…)


 そんな思いを抱きながら意識を手放し眠りに落ちていく…


 イシェリカが眠りに落ちた後、寝室の扉が少し開き中を伺う琥珀色の双眸。スルリと扉の隙間から寝室に入ってくると机の上に乗り彼女の寝顔を確認して眼を閉じる『れを』だった。


【閑話・カトラスの受難】


 支部長に押し付…ゲフン、ゲフン。任された事を済まそう。


「マーナルさんはイシェリカさんとはどういった関係ですか?」


「イシェリカは私の双子の妹です」


 彼女の発言に疑問を覚える。それというのも俺の知っているイシェリカはブラウンがかったブロンドだった。瞳の色も全く違う。


「失礼ですが髪や瞳の色が全く違うのですが…」


「そう思うのも無理はありません。私も二週間前まではブロンドに碧眼でした。急に髪は色を失い、瞳は緋色に変わりました。そうして待ち合わせをしていた場所にあの子は現れず連絡も無い。今までも遅れる事はありましたがその場合には連絡を寄越して来る子でした。不安を感じ私は最後に連絡のあったこの町を訪ねて来ました。そしてギルドで確認するとあの子が失踪したと言われ捜索許可を求めている所に貴方が来ました」


 そうか…俺のタイミングが悪かったのか…


 支部長め!今に見てろよ!


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次は18:00更新です。


僕と彼女の別れる理由【短編】

https://kakuyomu.jp/works/16817139556464269199/episodes/16817139556465980184


NTRれた彼女が僕に未練があるはずがない【短編】

https://kakuyomu.jp/works/16817139556510579725/episodes/16817139556510600289


読んで頂ければ幸いです。

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