46話短編 かき氷と佑樹、亮介たち


 2月10日、気温34度の小町通り。かき氷店には青色のエプロンをつけた道也と佑樹が立ち、ミカンやブルーベリーなどのシロップをかけツユクサの花びらが描かれた皿に入れたかき氷をスプーンと一緒に客に渡している。


 「ブルーベリーやイチゴのかき氷、150円ですよ‼」道也が大声で呼びかけると「ミカンのかき氷を食べようかな」「俺はブルーベリー」とキャスィーと鷹野が150円を道也に渡して笑みを見せた。

 キャスィーはツユクサの花びらが描かれた薄手のコートにベージュのブーツ、鷹野は白の冬用シャツにベージュのジーンズと黒いスニーカーを着ている。

 

 「ありがとうございます。佑樹くん、かき氷二つや!」「はい!」佑樹がかき氷機を回すと、白い氷にルークが「リル、見てごらん」と娘を肩に乗せながら一緒に嬉しそうな声を上げる。

 

 「お待たせいたしました。ブルーベリーとミカン、リンゴとイチゴ2杯、ラムネのかき氷です」佑樹が鷹野とキャスィー、亮介と美月と直美、アーノルドにガラス製の

皿に入っているかき氷を渡した。

 「ありがとう」廃材の木でできたスプーンで口に入れると、「冷たい」と直美やアーノルドが笑みを見せる。

 「美月、9年前の『音楽祭』でもブルーベリーと桃のかき氷を食べたよな」亮介が言うと、「ライブが終わった後、暑さで溶けてジュースになったんだよね」と美月が使い終えたスプーンを道也に渡しながら答えた。



 「佑樹は何でかき氷店で働き始めたんだ?」亮介に聞かれ、佑樹は「かき氷を作ってみたくて、道也さんや彼の兄の瞬一さんに氷の削り方を聞いてたんです。ふわふわのかき氷を作るのが難しくて、溶けることが多いです」と水色のタオルで首から流れる汗を拭きながら答える。

 道也の兄で27歳、茶色い短髪で緑色の長袖シャツと黒いジーンズを着た178センチの梅本瞬一が美月に一礼し「佑樹が来てくれてから、かき氷が売れ続けてます」と佑樹の肩をたたいて嬉しそうな笑みを見せた。


 「父に『ロンドンの学校で、ストリートダンスや英会話をやりたい』と言ったら『海外なんて行くんじゃない!日本で過ごせ‼』と怒鳴られました。父は、海外から来る人を憎むんです」

 佑樹はため息をついてから、「ロンドンで色んな人と出会いながら、6週間過ごします」と亮介たちに笑みを見せる。

 「俺と美月、直美もロンドンに行くんだ。ストリートライブもやるぞ」「紅茶店も見に行くんだよね」と直美が笑みを見せる。「ああ」



 「かき氷、おいしかったよ」ルークが道也と瞬一、佑樹に向かって手を振り鎌倉駅へと向かう。「ありがとうございました」「リルちゃん、またな」

 鷹野がキャスィーと手をつないで歩いている。顔を赤くする彼を、ルークと直美が噴き出しながら見ていた。


 (完)

 


 




 

 

 

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ビーヘイバー SNSいじめと連れ去り事件 porksoup (ポークスープ) @porksoup

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